Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#559 山での日々を思い出しております~「武士の流儀 1」

『武士の流儀 1』稲葉稔 著

風烈廻りの与力を引退した桜木清兵衛。

 

さて、山の日でございます。一週間前まで山の中腹にいたんだなーとしみじみと思い起こしているところ。下山し空港に向かう間も名残惜しさに何度も山を見上げ、良い経験であったとちょっぴり武士的な気分になった。

 

空港までスムーズに到着したので随分と時間が余ってしまい、早速Kindle内をチェックして読書することに。フライト時間も含めて4時間強時間があったので以前に購入した作品から本書を読むことにした。こちらも何かのセールの時にまとめて7巻購入してあったもので、タイトルと表紙のデザインが「武士風な私」の心にぴったりだったことからさっと読み始める。

 

主人公の桜木清兵衛はまだ50に届いたばかりというのに体調を崩したことから与力の職を退き、息子に家督を譲った。寝付いたままの生活が続き、これは環境の良い場所に移り養生に勤めようと根岸に移るも、なんとものの数か月で回復。重病どころか風邪をこじらせただけと地元の医者にも太鼓判を押され、今は本湊町に引っ越し楽隠居生活を楽しんでいる。

 

元風烈廻りの与力だけあり清兵衛は魅力に溢れている。まず、渋い。言葉の重み、人との接し方がものすごくかっこいい。何事にも正義一貫で真っすぐなのだが、若い頃はちょっぴりやんちゃなところもあったようで、それがまた味を出している。今はただの隠居なので人当たり柔和でステキなおじさま風だが、昔鍛えた剣術は今でも健在だ。

 

そして元与力は弱きを助ける。困っている人や事件を見過ごすことができず、この時も目の前で侍が切りつけられるという事件に遭遇し、切られた侍側へ手を差し伸べた。すでに奉行所の人間ではないわけだから、罪を罰することはない。ただ、悪とみなす者の心を正し、痛手を負った者への詫びを忘れさせない。それも偉ぶることなく、自然にやってのけるから尚ステキ。

 

1巻目は清兵衛のひととなりを説明するような内容となっている。解決する事件も捕り物とはどこか違い、町名主のように人情的に解決するものとも異なる。どこか教師に諭されるような温かみを含み、「まっすぐに生きろ」と言われているような気分になった。

 

少し激しさには欠けるが安定感のある時代小説で、それは主人公の人柄によるものだろう。手元の7巻までしっかり読んでいきたい。ああ、読みたい本がたくさんあるって幸せだ!皆様もよい休日をお過ごし下さい。