Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#563 江戸版ジェントルマンなんですよ~「武士の流儀 2」

『武士の流儀 2』稲葉稔 著

元与力の人助け。

 

この夏、暑さのせいかマスクで耳のあたりがかぶれてしまい、痒いし痛いしでものすごく辛い。みなさまもどうぞお気をつけて。

 

山を下った日に読み始めた本書、2巻目も読んでみることにした。

 


とりあえず、これはまず言っておきたい。できる大人(の男性)はかっこいい。さらに決して偉ぶらず、公平で、寛大な大人は尚更かっこいい。そんな男性がまさに本書の主人公の清兵衛だ。まだ50になったばかりだというのに、労咳の疑いがあったことから、家督を息子に譲り、今は隠居生活を楽しんでいる。

 

妻と二人で本湊町に居を構え、すでに1年余りだろうか。妻の安江は清兵衛の大きな体が邪魔だといい、何かと外へ出ることをすすめてくる。2巻目では4つのストーリーがあり、清兵衛が町で偶然出会った事件の解決を助けるという話だ。

 

4つ目に仇討ちをと江戸に出て来た青年の話がある。父親を武士に殺され、その武士が江戸勤めになったと知りやって来たという。仇討ちもただ無念を晴らすべく斬り付けて良いというわけではないらしい。それ相応の手続きが必要なのだがそんなの普通は知る由もない。よってこの青年、甚之助も敵の本拠地にやって来た。

 

村を出る時、村年寄りに仇討ちは許可がいると聞かされはした。そこでまず江戸についてすぐ奉行所に行くことにした。道を聞き、江戸には北と南の奉行所があると聞く。近い方と北奉行所への道を聞いた。そこで対応したのが清兵衛の息子、真之介だ。ひとまず真之介は仇討ちを止めようとする。まずは本当にその敵が父を殺めた証拠が必要と説得する。甚之助はしぶしぶ奉行所を出るが、そこで簡単に引き下がるようには見えなかったことから、真之介は父に助けを求める。

 

ここで清兵衛の登場なのだが、甚之助の心に寄り添い最後までその思いを支える所が本当にかっこいい。弊社のアレ(上司)の不出来具合とついつい比べてしまいたくなる。江戸の人はよく歩いたようだから、日本橋から神田あたりまで往復することもあったらしいが、それでも会ったばかりで江戸を知らない甚之助のため、清兵衛は江戸の街を何度も行き来する。

 

もし、甚之助が親の敵をと勝手に人を斬ってしまえば、それは罪となる。そして相手の家族から今度は甚之助が返り討ちを受けるだろう。さらには、本当にその男が父の敵かも曖昧だし、なにより先々を考えても甚之助の手を血に染めたくはないという清兵衛の思いが温かい。

 

最早清兵衛も与力ではない。よって解決する内容も捕物とは異なり、無料の万事屋というか、困った人を助けるボランティア的なところがある。ガチで武士の強さを求めている人にはものたりないのかもしれないが、男気それが「流儀」なのだろう。こんな上司がいたらなあ、とついため息をついてしまった。

 

本シリーズ、手元にまだ数巻あるので読み進めていきたい。