Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#566 古女房のやきもち ~武士の流儀 3

『武士の流儀 3』稲葉稔 著

清兵衛の若かりし頃。

 

朝活という言葉、今でも使われているのだろうか。早起き派?朝派?まあ、とにかく朝早起きして行動するタイプのことを言いたいのだが、私も今やそのタイプ。朝4時に起きている。もともとは5時起きだったのだが、出張生活の間に4時起きが身についてしまい、今も目覚ましは4時のままだ。夏の間は4時でもほんのり明るいのだが、お盆を過ぎたあたりから明るくなる時間がほんの少し、数分のことかもしれないが遅くなっているように思う。まだまだ暑い都内だが、確実に季節の移り変わりがやってくることを実感した。

 

この週末は久々に仕事のない、自分の為のお休みだった。少し勉強しておこうとビジネス書なんかもぱらぱらめくるも、やっぱりこれ!と時代小説の続きを読む。

 

 

3巻目ともなると、登場人物の人柄が随分と身近に感じられてきた。清兵衛は男の中の男を絵に描いたような、仕事が出来、剣術も強く、学もあるかっこいい大人の男性。体格も良く、派手に着飾ることはなくとも人に好印象を与える姿で町を歩く。今で言えば警視庁の元お偉いさん、という立場となるが、決して偉ぶることなく謙虚なところがこれまた素敵。

 

妻の安江もしっかりとした武家の妻らしい人だ。賢く、凛としたところがとても好印象。今は家に二人きりなので通いの下働きがいるわけではない。安江が家事全般を一人でこなしているが、清兵衛が現役の与力であった頃は恐らくそつなく家内を統率し、清兵衛を助けていたに違いない。人の心に敏感で優しい女性。

 

そんな二人は清兵衛が50になった頃に労咳を患ったとの誤診から、家督を長男に譲り隠居生活となった。すでに病からは回復し、散歩を日課とする清兵衛は、ある日かつての知り合いと偶然出会う。与力時代の駆け出しの頃だ。清兵衛は浅草あたりを縄張りとして「花村銀蔵」という名前で遊び倒していた。その知人は当時を良く知る小料理屋の女将お節だ。

 

お節は今でも変わらぬ魅力を持っていた。当時二人の間に何かがあったわけではないが、懐かしい出会いにふと心が揺れる。そんな時、安江は激しく体調を崩す。体力が衰えると心も弱くなる。そのせいか、つい、お節のことで嫉妬してしまった安江は清兵衛に小言をぶつけてしまう。その頃を後悔する気持ちもあってか、ますます体が言うことを聞かなくなりついには倒れてしまった。

 

自身の労咳を懸命に看病してくれた安江を思い、清兵衛も安江の枕元を守り続ける。いつしか安江の病も回復するのだが、そのかつての世界のお話が清兵衛の若かりし日、現役で更にかっこよさが倍増の頃を連想させて楽しく読めた。

 

3巻目からは清兵衛の人柄に惹かれてしまい、早く続きが読みたくなってきた。時代小説の中の江戸は実直な人が多く、見習いたいと思ってしまう。心がふっくらする小説。