Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#532 本当なら団子でも食べながらまったりしたいのですが~「雨の刺客」

『雨の刺客』風野真知雄 著

冬馬、第2弾。

 

GW中の移動は大変かと思いきや、混雑にも巻き込まれることなく本日からお仕事です。機内ではゆっくりとこちらを。Kindle Unlimited、キャンペーンの期限まで堪能したい。

 

さて、元火盗改めの矢沢冬馬は、「ふうらい指南」などという看板を掲げて同心の街、八丁堀のど真ん中にある北島町で一人気楽に過ごしている。火盗改めを辞職したことになんの未練もないが、大きな盗賊一味を捕らえられなかったことだけは今でも心残りだ。

 

その盗賊らがまた動き出したという情報があり、長官自ら冬馬へ秘密裡の調査を依頼した。冬馬はかなりデキる同心で、武術だけではなくあらゆることを踏まえて予測をし、確実に罪人を取り押さえる能力が高い。こうして釣りに没頭する日々でもその力は一切衰えていない。2巻目ではその様子がはっきりと表れており、ただただかっこいい。

 

今回はなんと馬をも手懐けてしまった!釣りにハマって毎日のように釣り場に行くもなかなか成果が見られないのだが、砂浜で暴れ馬を御しきれない青年が落馬するところに出くわし、なんとその馬が逃げようとするところへサッと飛び乗り御してしまう。

 

馬の持ち主はどこかの若様で、冬馬に指南を受けたいと長屋までやってきた。どうやら友人と賭けをすることになり、どうしても馬を乗りこなさなくてはならないという。身なりだけではなく下屋敷も立派なところを見ると、恐らく大変よいところの若様に違いない。冬馬は快諾し、乗馬のコツを教え込むこととなった。

 

この若様がまたカリスマがあるというか、リーダー気質もさることながら、勇ましいところがある。互いに信頼が生まれるのは、お互いに似たところがあるからだろうか。やはり能力の高い人は、同じように能力の高い人を見抜くことができるのだろう。

 

さて、本シリーズでは団子屋が頻繁に出てくる。1巻で指南した清八が営む団子屋には読んでいるだけで心惹かれるほどに美味しいそうな草団子がある。甘すぎない上品な味で、しっかりした団子はむしやしないとしても最適なようで、ふうらい指南で出会ったものたちが次々と集まってくる。

 

そう、団子は人を寄せるのです。お土産として今まで団子を持参して嫌な顔をされたことは一度もなく、むしろ歓迎されることの方が多い。生菓子だけれど気取ってはなく、餅菓子の中でも手軽に食べられるところも良いのだと思う。時代小説を読んでいると団子が出てくる度にどうしても欲しくなってしまうのだが、清八の出す団子は思わず浅草あたりまで買いに行こうという気にさせるほどに頭から離れなくなる。今は遠出しているので、早速宿泊先の近くを検索したのだけれどなかなか団子屋が見つからない。団子欲を早く満たしたいのだがコンビニでは味気ないし、専門店も近くにないようで仕方なく地元の餡のお菓子を食べている。

 

そんなほっこり団子の話にお腹を空かせていたら、どんどんと盗賊一味の手が見え始める。最終的には武士の情に涙するのだが、最後まで相手を敬う心を持ち苦悩するところがまた悲しみを誘う。武士の美学というのだろうか、戦う間柄であってもどこか人としての敬意を最後まで持ち続ける清らかさを令和に暮らす私たちも持っていたいものだ。

 

冬馬のようにさらりと仕事をこなし、ものすごい集中力と精神力で物事にあたるタフさが欲しい今日この頃。5月病にならずにがんばれるかなあ。冬馬を見習っていってまいります。