Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#531 そろそろ仕事の準備など~「ふうらい指南」

『ふうらい指南』風野真知雄 著

元火盗改め、引退後にも大活躍。

 

実はGW後半は仕事の予定があり、本格的な休みは今日で最後。最早社会復帰かと重い足取りで朝から準備に精を出した。

 

さて、この夏は出張を多く控えており、それも長期となる予定だ。いつもは長くても5泊程度だったが、最大で1か月を超えるとなるとこれは本格的な準備を考えねば。直前に準備しているようでは間に合わないのでスーツケースから簡易的に料理するためのグッズまで、欲しいもの必要なものを検討してみた。

 

小分けのケースやガーメントケースなどはたいてい無印で調達しているのだが、5/9までセールと知り、早速チェック。必要なものをいくつか購入する。

 


さて、昨日のうちに読んでみたいKindle Unlimitedの本をダウンロードしておいた。本書はすっかりファンになってしまった風野真知雄さんの作品だ。

 


上の作品があまりに楽しく、ちょうど他の作品も読んでみたいと思っていたところだったのでありがたい。気分を盛り上げるにも早速読書を始める。

 

明日から仕事かとこちらは重い雲に包まれたような気分なのに対し、本書の主人公は無く子も黙る火盗改めを引退したばかりの元同心だ。矢沢冬馬は家督を息子に譲って引退し、今や兼ねてより憧れていた釣三昧の日々を満喫している。が、釣りの成果はほとんどなく、むやみに海に竿ををおろしているような状態だ。でもそれが楽しくてたまらない。40代にして早々に引退したのは、事件を取り締まる際に後ろからの殺気に刀を振るったところ、同僚が傷を負ったことにあった。しかし、冬馬は決してその勘が外れていたとは思わない。なぜなら冬馬はあらゆる武術に精通しているからだ。

 

その腕を買われて指導者への道を勧められるも、釣りを楽しむのだと道場に縛られる生活を受け入れなかった。が、ある日道で襲われる女性を助け、その女性に合気道を教えることになったことから「ふうらい指南」の看板を掲げて武術を教えることとした。

 

本書でまた一つ江戸について知ったことがある。同心はみな八丁堀に住むのかと思っていたが、火盗改めである矢沢家は小石川にある。火盗改めと町廻りの同心はなかなか仲間とは言い難いものがあり、住むところも異なったようだ。冬馬は釣りに便利な海に近い土地に移り住みたいとあれこれ探すも、やっと見つかったのは北島町。そこは八丁堀のど真ん中で、火盗改めならば絶対に選ばない場所だった。が、便利を考え、冬馬は飄々と暮らしている。

 

この「ふうらい指南」にはちょっと変わった生徒が多い。冬馬は道場などを持っていないので、指南はもっぱら砂州や神社だ。生徒が練習している間は川や海に釣竿を傾ける。そして、滅多に魚がかかることはない。釣りのほうはさっぱりだが、冬馬には教える才能があるらしく、生徒たちはめきめきと上達する。

 

そして合間に火盗改めの仕事もこなしていた。息子はまだ心許ないところがあるが、誰よりも武術の心得がある冬馬は上からも一目置かれ、むしろ火盗改めを離れた所にいることから秘密裡に調査を依頼され、冬馬の日々は指導に、調査に、団子屋通いにと忙しく、さっぱり釣りは上達しない。そこがまた笑えてしまう。

 

そして初めての生徒であるおあきの存在が冬馬の心の片隅で時に大きくなったり、支えとなったり。こういう人情溢れるところが風野作品の醍醐味だろう。

 

シリーズ3作なのでこれから続きを読みます。楽しみ。