Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#533 海辺に立ちたくなりますね~「ふうらい秘剣」

『ふうらい秘剣』風野真知雄 著

冬馬、第3弾。

 

ついにGWも明け、早く日常に戻りたくてうずうずな人もいれば、やっと一息つける!とこれから休みいう人もいるだろう。私は一足早く、GW後半からいつものオフィスではなく地方を満喫しつつお仕事再開。今年はカレンダーの並びが良かったので、ストレスや日頃の毒気が十分に抜け、新たな気持ちで日々を送れますように。

 

さて、Kindle Unlimitedに登録した本を結構なスピードで読んでいるので早めにメモを残していきたい。

 

シリーズ3弾目、冬馬は相変わらず釣りに精を出すもなかなか上達しない。無心になっていると鯛が釣れたりするのだが、3巻目に至ってはなんと酒屋のご隠居を釣り上げた。一応しっかりと目定めて針を飛ばしたつもりだったのだが、針は目の前の水場になかなか落ちてこない。すると冬馬の後ろから「痛い!」と声が...。振り返るとご隠居らしきご婦人の手になんと冬馬の針が刺さっていた。

 

ご隠居を背負い、急ぎ自宅に戻って手当をする。それからご家族にもお詫びをと家まで送り届けるのだが、着いたところは江戸でも3本の指に入る大店の酒屋であった。さっぱりな気質のご隠居は、自分の趣味の茶道を教えてみたいと「怪我のお詫びなら茶道の生徒になれ」としばらく冬馬はご隠居のもとへ通うこととなる。

 

その間にも本職のふうらい指南に生徒が訪れるのだが、今回の生徒さんはとても想いの深い武士、そして同心の下っ引きには縄の扱いを教える。武術には流派のようなものがあるのだが、冬馬は若い頃に見聞の旅に出ており、見たものをどんどん吸収し、半ば独学で収めてしまった。よってもともと学んでいた流派の他にも多くの手を扱うことができる。

 

今回訪れた武士の生徒は先行き短いことから、心残りである家に伝わる秘伝を復活のために力を貸して欲しいという。家に伝わる剣術なのだが、祖父が早世したことから代々続く技が断絶してしまったという。唯一巻物が残されているのだが、何のことだかあまりに抽象的で本人にも検討が付かないらしい。もともとその武士も剣術には長けた人物なのだが、今や体が病で言うことを利かず、冬馬とともに巻物の言葉を頼りに家に伝わる技を再現する。

 

今の東京はずいぶん埋め立てられているが、江戸時代は日比谷あたりも海に近かったという。深川あたりを小舟で行き来し、海辺で釣竿を垂らす人も多かったようだが、今の地図しか知らずにいたので、冬馬が日比谷で溺れる少年を助けるところで「日比谷で溺れる?」と海の位置が気になったので調べてみた。

 

(東京湾事務所HPより)

 

ああ、なるほど。確かに江戸城が海沿いならば日比谷も海の目の前だ。釣りライフを最重要視した冬馬が八丁堀を選ぶわけですね。海まで歩いてすぐだし。一つ一つ調べつつ、歴史を確認しながら時代小説を読むことが楽しくなってきた。なんだか海に行きたい気分だ。

 

どうやら3作目で本シリーズは終わりのようなのだが、まだまだ続きそうなすっきりしない流れとなっている。これはもしかして別の名前でシリーズが続いていたりするのだろうか。著者の作品はテンポよく話が展開し、すいすいと楽しく読める。そして色恋沙汰は薄めで、その代わりにちょっと滑稽な江戸の様子がこれでもか!と詰め込まれている。もっともっと読みたい気持ちが止まらない。他にもシリーズ作品がたくさんあるので、また長期のお休みの時に一気に楽しみたい。

 

Kindle Unlimitedには読みたかった作品が多く、移動の際に嬉々として書籍を選んでいる。しばらくは時代小説が続きそうな予感。