Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#498 週休3日だったらいいのに ~「地に巣くう」

『地に巣くう』あさのあつこ 著

弥勒の月シリーズ、第6弾。

 

このところ続けて読んでいる本作、やっと6弾目までを読み終えた。

 

 

本作は同心である信次郎が中心となっている。信次郎が常に何を考えているのか、どういう暮らしをしているのか、いまいち謎めいた所の多い登場人物だったが、今回は私的な部分にもスポットライトがあたったことで…より一層謎が膨らんだ。

 

そもそも信次郎はいくら鋭く、賢く、捜査の能力があるとはいえ、あまりにも粗野すぎるところがある。人の気持ちなど一顧だにしない。他人に言われたくないこともずけずけと本人に言ってのけるセンスの無さ。傍若無人!唯我独尊!人の気持ちなど全くもってお構いなしで自由奔放に生きている。傍で仕える伊佐治親分も最初は信次郎の気質に耐えられず「岡っ引きを止めようか」と考えることも多々あった。ところが今も調べのために走り続けているのは信次郎の推理へ導く知性に惹かれているからだ。

 

木暮家は代々同心として仕えている。父の右衛門の時代に岡っ引きの伊佐治親分が木暮家に合流し、父亡きあとは信次郎が伊佐治と共に調べを続けている。親分から見れば右衛門と信次郎は似ても似つかない。人柄は対極で、親分は右衛門を尊敬していた。

 

ある日、信次郎が刺された。刺されたと言っても懐に入った30両の小判が妨げとなり、かすり傷程度の軽傷で済んだ。しかし、あの木暮信次郎を刺したのだ。絶対に絶対に絶対に安易に終わるはずがない。

 

信次郎と伊佐治親分が足繁く通う小間物屋の遠野屋の主人、清之介はもとは武士であった。母親の出は卑しく、亡くなった後に武家の父親のもとに引き取られたがほぼ存在を隠すように、刺客として育てられた。地元での辛い日々。今は江戸で遠野屋の主として商人として生きている。

 

信次郎が刺されたという情報は遠野屋をも驚かせた。遠野屋ほどではないとは言え、信次郎だってそれなりに剣の腕がある。しかも刺した男は老人だというではないか。小料理屋での帰りに刺されたとのことだが、いくら酔っていたとしても信次郎ならば避けられたはずだ。

 

その刺したと思われる男が翌日大川に浮かんできた。信次郎はなぜ刺されたのか。もしかすると、なにか大きな大きな企みが背後にあるのかもしれない。そう調べていくうちに、過去が大きな意味を成すことに気が付く。父、右衛門の時代に何かがあったはずだ。それを追い求めることで、謎を紐解くストーリー。

 

6巻目に来て、ますます信次郎は出来るけど嫌なキャラ全開になってくる。しかし少しずつではあるが信次郎がどのような思いで生きているのかが見え始めてきたところが面白い。もしかするとものすごく魅力的な人物なのかもしれない。しかしまだまだ今は感じの悪い同心だ。対等に話をするのは伊佐治親分くらいのもので、堂々と信次郎に小言を言ったり憎まれ口を叩くのに笑ってしまう。

 

本シリーズ、読めば読むほど言葉の美しさや知的さに感嘆。選ばれた言葉が小説の雰囲気に緊張感を与え、ぞくぞくするほどの臨場感がある。連休がもっと続けばなあ。最後まで一気に読むのに!!!