Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#527 香り立つような小説でGWをスタート~「花を呑む」

『花を呑む』あさのあつこ 著

弥勒の月シリーズ第7弾。

 

待ちに待ったゴールデンウィーク、曇り空でも気分は爽快。カレンダー的には5/2と5/6が平日となるが、有休を取得して10連休という人も多いだろう。

 

今年の連休にやりたいことはすでにリストアップしてあるが、詰め込みすぎな気もする。前半はひとまず衣替えを済ませること。全体的にはがっちり英語のブラッシュアップを考えている。それからいつもよりゆっくり読書ができそうなので難しめの本も読みたいし、Netflixをどうするかも考えよう。

 

さて、昨日は唐突に命令されたオンラインミーティングの参加により、すっかり体力を使い果たして帰宅した。でも当分休みかと思うと心が弾み、「そうだ、あれだ!」と早速本書を読み始めた。

 


この頃楽しんでいる本シリーズ、なんと順番を間違えて6番目の次に9番目を読んでしまった。その間を埋めようと早速第7弾を読む。

 

本シリーズの特徴とも言えるが毎回表紙がものすごく美しい。表紙にはたくさんのメッセージが込められているが、今回は真っ赤な花や櫛、そして美しい庭の見える部屋があるので女性の存在が大きな意味を成しているのかしらと想像しつつ読み始める。

 

伊佐治親分の縄張りにある大店で奇怪な事件が起きた。なんと主が幽霊に殺されたと言う。主とお内儀は20ほども年が離れているのに、なんと妾まで囲っていたという強者だ。その妾もひどい姿で主と同じ日に亡骸が見つかっている。お内儀が家のものと朝の準備をしていた時だ。お付きの女中がお内儀が愛用する遠野屋の紅を鏡台に片付けようと引き出しを開けた時、いきなり中から手をつかまれ引き込まれそうになった。全力で腕を引き離すと手には髪の毛の束が現れる。恐ろしさに二人は大声を上げた。奥から手代が何事かと駆け付け大騒ぎとなるが、隣の部屋で寝ている主の部屋はひっそりとしている。不思議に思い襖を開けると、主は口にたくさんの牡丹の花を詰め、ひっそりと息を引き取っていた。そして足元には女の幽霊が立っていたという。この頃足が遠のいていたという妾が主を恨んで呪った、というのが事件の軸だ。

 

こんな怪事件が起きている間、なんと同心の信次郎は家でこんこんと寝込んでいた。伊佐治親分にまで病をうつし、それでも治らず1か月余りも寝込んでしまった。伊佐治親分はかろうじて回復し、さっそく現場に顔を出すも、とにかく異様な背景に解決の糸口を引き出せない。一方で親分にはこれが幽霊の仕業とは思えず、悶々としながら信次郎の回復を待っていた。

 

さて、そうこうしているうちに回復した信次郎は面白い事件があったのに見逃したと駄々をこねていた。しかしお江戸の事件は相変わらず次々と湧き、二人は別の事件にあたることになる。一見いつもと変わらない質の事件かと思う伊佐治親分だが、信次郎の目には、これまたいつもの通り、事件と事件の間の闇がはっきりと見えていた。

 

信次郎がかねがね事件の先には遠野屋があると言うが、口に出す度に伊佐治親分に窘められる。しかし今回もやっぱり遠野屋につながってしまう。今回は亡骸から遠野屋の小判の包み紙が出てきてしまう。この事件の少し前、遠野屋の清之介のもとへ、武士である兄の使いがやって来た。500両用立てて欲しいという。用途は以外な内容だった。それを聞き入れた清之介だが、この金が他人の手に渡ったことが容易に想像がついた。

 

こうしてまた3人は犯人捜しに翻弄する。どんどんと事件同士のつながりがつまびやかになる所は息をのむテンポで進んでいく。まるで伊佐治親分の手下たちと一緒に江戸の中を小走りしているような気持ちになる。

 

それにしても牡丹にそんなに強い香りがあっただろうか。著者の見事な世界に引き込まれつつ、牡丹の香りに包まれるような気持ちになる。一向にはっきりと香りが思い出せないでいるのに、甘い香りにむっと包まれるような、濃厚な香りを身にまとった人とすれ違う時に感じる「! この香り!」と一瞬心が香りに持っていかれる時のように五感ごと物語に引っ張られていく。牡丹はちょうど今が時期だろうか。「あとで花屋さんに行こう」と読了後まで花に呑まれたままだ。

 

ひとまず、9巻を先に読んでしまったとはいえ、7巻はそれはそれでちゃんと楽しめた。よし、この勢いでGWを満喫してやるぞ。