Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#432 こんな「酒場」なら常連になってみたい ~「とっても不幸な幸運」

『とっても不幸な幸運』畠中恵 著

「酒場」と謎の缶。

 

ここに来て、ファンを自称していた自分が恥ずかしくなるのだが、著者の畠中恵さんは「はたけなか めぐみ」さんと読むことを知った。同級生に同じ字で「はたなか」という人がいたので、しゃばけシリーズを読み始めた時からずっと「はたなか めぐみ」さんだと信じて疑わなかったのだけれど、本書の著者紹介にフリガナがあってその事実を知った。ああ、ファンとしてなんと恥ずかしい!

 

本書はBlack Fridayの時だったかな?セールの時に購入した本で、今回の冬のキャンペーンでやたらと本を購入してしまったことを反省し、購入から時期の経っているものを先に読み始めることにした。

 

さて、畠中さんと言えば「しゃばけシリーズ」を筆頭に江戸時代を背景に作品を書くことが多い。そういえば明治のものも楽しく読んだ。

 


明治の時ですら「急に現代に来たなあ」と思わずにはいられなかったのに、今度は完全に「今」です。2019年だからギリ平成だけれど、今なのは変わらない。

 

舞台は新宿にある「酒場」という飲み屋で、戦後代々続いている。客はみんないわくありそうな人たちばかりで、それよりなにより店長が一番怪しい。腕っぷしが強く、自分の店の中でも大暴れ。客たちも店長にはかなわないようで、たまに仕事をさせられたりするという。

 

そんな店長には娘がいた。中学生でのり子という。2度目の結婚で妻となった人の連れ子としてやってきたのり子は、母の死後には祖母の元で暮らしていたのだが、その祖母も鬼籍に入り、店長の元で暮らすこととなった。

 

一応父親なので、店長はそれなりにのり子の面倒を見てはいるけれど、「酒場」は夜に営業しているのでいつも昼まで寝ているし、のり子の学校の行事に無頓着だったりするけれど努力はしている。

 

のり子の趣味は100均巡りで、ある日そこで買った奇妙な商品をきっかけにトラブルが起きる。それは「とっても不幸な幸運」と書かれた缶で、プルトップを引いて缶を開けると何等かの現象が起こるというものだった。のり子の呼び起こしたトラブルが原因で店長とのり子、そして「酒場」の常連との距離が近くなる。常連客もなぜかこの缶を買って来ては「酒場」で試し、都度問題が発生。それを解決していく店長の機転も面白い。

 

それにしても時代小説ばかり読んできたせいか、あの畠中さんが現代をテーマに小説を書いたということに少なからず違和感を感じてはいたものの、読み始めてからはそんなことも忘れて没頭していた。やっぱりストーリーは面白いし、しゃばけの妖的な要素が現代風にちりばめられてはいるものの、全く異なる空気が新鮮だった。

 

ところで、「酒場」の店長は料理上手であれこれ作ってくれるのだが、その中に「チーズシチュー」というのがあった。じゃがいもにチーズを混ぜたものとして出て来ていて、ものすごく美味しそうなのだけれどどんなものかがわからない。マッシュしたものにチーズを加えたもののイメージだけれど、シチューとあるのでもっとクリーミーなんだろうか。ものすごく気になる。