Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#433 池之端が舞台の時代小説!~「上野池之端 鱗や繁盛記」

『上野池之端 鱗や繁盛記』西條奈加 著

鱗やの歴史。

 

西條奈加さんの小説といえば、昨年の直木賞をきっかけに書店でもよく見かけるようになった気がする。私はこの小説が出会いのきっかけだった。

 


和菓子屋さんが舞台のお話で、読んでいるうちにどうにも和菓子が食べたくなるようなお話で、続編出てくれないかなーとひそかに願っている。本書も料理のお話かなと思い早速読み始めた。

 

主人公はお末という信州出身の娘だ。舞台の鱗やは池之端にある料理屋で、もとはお末のいとこのお軽が務めていた。ある日お軽の父親がお末の両親を訪ね、「お軽は良縁を得て嫁ぐことになった。店よりお軽のようによく働く娘を紹介して欲しいと頼まれたので、お末はどうか」という打診した。奉公を考えていた矢先のことだったので、迷っていた時にちょうど江戸からきた商人に鱗やとはどんな店かを聞いてみると、色よい返事が返ってくる。立派なお店で番付にも出ていると聞き、お末の両親は娘を方向に出すことを決める。ところが店に着いてみると話が違うことばかりでお末は早速困り果てることになる。

 

聞いていた話:鱗やは立派な料理屋。お軽は働きもので、良縁を得た。

本当の話:鱗やは落ち目の連れ込み宿兼料理屋。お軽は男と逃げた。

 

そもそもお軽の父親はあまり信用のならない人で、最初からお末の両親をだましていたわけだ。鱗やで一緒に働く面々もやる気ゼロで料理も冷めたものばかりと評判は落ちる一方という雰囲気。そこへ婿養子でやってきた若旦那という人を中心に店を立て直すというストーリー。立て直し方は働き方改善なので料理の話はあまり出てこない。

 

今まで著者の作品を5冊読んできたけれど、一番「おしい!」感があったかなーと思う。他のストーリーはもう少し先が読めない感があったけれど、本作は予想通りにぽんぽんと早いペースで話が進んでしまったように思う。そもそも、タイトルにあるような「繁盛」の場面があまりなく、大店とも言えない感があるのもちょっぴり物足りなさにつながっているかもしれない。ただこれは、高田郁さんのストーリーと本筋がかぶっているから感じることなのかも。あちらは長編大作だし。

 

そして、主人公のお末のキャラもちょっぴり薄いかなー。確かに賢い子だけれど、その賢さが悪目立ちしているのが残念なところ。池之端という土地の説明もあまりないし、やっぱり時代小説は深川とか神田とか両国とかだよね!と思いつつ読んでしまった。でも池之端は今は東大と上野公園のちょうど真ん中でなかなか手の届かない物件ばかり。令和の今は逆になっちゃってるのは面白い。もっと江戸のことを学びたいなと改めて思う。

 

さて、Amazonの冬のキャンペーンで西條さんの本は他にもたくさん購入しているのでどんどん読み続けていきますよ。