Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#178 お気楽な人がまた元気になる姿は良いものですね

『まったなし』畠中恵 著

「まんまこと」シリーズの5冊目。悪友、清十郎もついに年貢を収めるか!? 

まったなし (文春文庫) まんまことシリーズ 5

まったなし (文春文庫) まんまことシリーズ 5

  • 作者:畠中 恵
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: 文庫
 

 

クリスマス直前になって気がついた。今年、街中にサンタがいない。12月に入るとクリスマスツリーも立派に飾り付けられ、お店の人々もサンタ風な格好をしていたりしたものだが今年は三密を避けるためだろうか、サンタ姿の呼び込みの人を筆頭に街からサンタが消えてしまったようである。

 

ツリーもなんだか寂しげだ。毎年都内の商業施設は大きなツリーを飾ることで評判となっているところがいくつもあるが、今年伝統的なもみの木に飾りのようなもののほうが心に訴えるものがあるような気がした。出勤時に見るものは大きさは3階建てくらいの迫力があるのだが、素材や色がなんとも寂しく見えてしまう。

 

きっと来年のクリスマスになればまたいつものように華やかな12月が戻ってくるとは思う。 そして「去年はコロナで寂しかったなあ」と思えるほどに世界が元の姿に戻っていればと思う。とにかく今年はかなり控えめなクリスマスのせいかこの時期になっても時代小説を読もうかなと思えるほど読書にクリスマス感がない。

 

この頃続けて読んでいる「まんまこと」シリーズもやっと5巻目まで読み進んだ。妻子をなくした麻之助も友や愛猫「ふに」のおかげで町名主の仕事へも復帰しつつある。友の存在は大きい。親より共にいる時間が長いだろうし、心の奥にある思いも打ち明けやすい。麻之助の二人の幼馴染の姿を見ていると、こんな風に友情を育める友達がいたらと思ってしまった。

 

今回、友人の清十郎が人生で大きな決断をした。父親が亡くなり町名主を継いでから、次第に嫁取りの話があちこちから降ってきた。自他ともに認めるモテる男であるはずなのに、なぜか嫁が決まらない。そこへ新たな登場人物が数人出てきてストーリーを盛り上げる。

 

5巻目になってやっと麻之助の口から妻の名が出てくる回数も減り、読み手も少しほっとする。ああ、やっと元気を取り戻しつつあると微笑ましい。今回は特に親友の嫁取りがかかっているので怖い父親世代に拳固を食らってもしっかり働いている。

 

今まで読んだ時代小説のシリーズものはそれほど気持ちを振り回されることはなく、登場人物とともに生きている思いにまでなることはなかったのだが、この作品はどうにも麻之助の町の人でもあるかのように麻之助を見守りたくなる。

 

これもクリスマス時期に読んでいるからだろうか。家族に会いたくとも年末は移動できない。そんな思いが読書にも反映してしまったのかもしれない。