Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#396 上生菓子が食べたい ~「お江戸甘味処 谷中はつねや1」

『かえり花 お江戸甘味処 谷中はつねや 1』

独立して谷中に店を構えた若夫婦。

 

なんとなく時代小説の読みたい気分が続き、こちらも随分前に料理絡みの時代小説を探していた際に購入したもの。3巻まで出ているそうなのだが、ひとまず1巻を買ってみた。

 

谷中、考えてみると今まであまり行く機会は多くなかったように思う。上野あたりまでは出かけても、もう少し足を伸ばして谷中まで行こうかな、ということもなく今に至っている。

 

とはいえ、時代小説好きならば都内の東側はもっと攻めて行くべきで、地図を頼りに昔の面影なんかが見えてくればより一層小説を愉しめるというもの。

 

さて、本書はとてもふんわりやんわりしたお江戸小説だった。主人公は音松とおはつの若夫婦で、谷中に和菓子屋を構えることとなった。それまで音松は花月堂という和菓子屋で修行をしており、そこからのれん分けのような形で出した店は、妻の名前から「はつ」そして自身が花月堂から頂いた「音」の字を合わせ、「はつねや」とした。

 

妻のはつも花月堂とは縁があり、もともと父が振り売りとして勤めていたのだが、若くしてあっけなく病で倒れ、それ以来何かと情の熱い花月堂から助けの手を差し伸べられていた。はつの母親は夫の亡き後、お菓子用の木型を作る仕事で花月堂と縁があり、おはつは父のように振り売りとして働いた。

 

全般的に時代小説の闇のような部分は無く、新参者をいじめようとする周囲の目はあれどもそんなに辛辣なものではない。なんとなくマンガやドラマから小説版を作ったような印象をうける。

 

出てくるお菓子は茶菓子が好きな人なら理解が行くような定番ものが多く、読んでいるとやっぱり食べたくなってくる。ふと、お茶と茶菓子を甘味処の店先に腰かけてゆったりと時間を過ごすなんて、この頃そんな時間全く持てていないなと思い当たった。カフェでコーヒーを飲みながらケーキをつつきつつパソコン開いて仕事してなんていうのではなく、ただただゆったりと時の流れから自分を切り離すような瞬間を持ちたい。

 

そんな気持ちになったのも、この小説がふわふわ浮いているような、何とも言えない緩さがあるからかと思う。2巻以降、もしセールがあれば買うけれど、もう少し読み応えがある作品を今は読みたい気分。