Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#304 やっとオールシーズン分が揃いました!嬉しい!!

 『この2皿さえあれば。』有元葉子 著

秋冬編のレシピ。

 

 

この本は「春夏」と「秋冬」の2冊に分かれており、なぜか冬に「春夏」を買ってしまい、最近やっと待望の「秋冬」を購入した。オールシーズン、コンプリート!

 


冬に「春夏」を読んだとき、やはり旬のものやその季節にあったレシピが多く、梅雨時期に「秋冬」を読むのは違うかな?と思ったのだが、秋冬に関しては今時期でもぜひ作りたいと思うものがいくつかあった。例えば表紙のグリーンのぶどうのサラダなどは今時期でも美味しいと思う。

 

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左の「牛たたきのにぎり」と右の「ほうれんそうの海苔あえ」も夏でも十分に美味しそう。むしろ夏の食欲のない時に少しの量でも力がでそうな感じ。

 

この2冊のシリーズはどれも本当にシンプルなレシピなのだけれど、盛り付けの美しさもあって豪華な一皿が出来上がる。おもてなし用ならばこの2冊があればたいてい上手く行きそうだ。

 

どうやら「秋冬」が先に出て好評だったことから「春夏」が出たようだ。たしかに本書はどのページを見ても「ああ、これはいいな!」と思うものばかりで、書き溜めているレシピノートにメモを残したくなるものばかりだった。あまりに多すぎてメモは断念したのだが、いつか時間が出来た時に再現したレシピを記録しておきたいな、と思った。

 

レシピ本は世の中にたくさんある。数千円で手軽に購入できるし、オンラインでも簡単に検索できる。特にこの頃は写真もきれいなものが多く、思わず引き込まれて購入することも増えた。だが一つ気が付いたことがある。写真の美しいレシピ本はSNSで活躍する方が出版したものが多く含まれている。料理の行程に従った写真も多く、初めての人でも作りやすいのが特徴だ。だが、1冊の中で紹介されている20を超えるレシピはどこか統一性がない。確かに見た目に美しいカフェごはんをおうちのあるもので作れます!主婦の私でもここまで工夫できました!というメッセージは伝わってくるし、とても美味しそうなものも多いし、「なるほど、この手があったか!」というアイデアも豊富だ。だが「料理」を仕事とする方のレシピ本を見ると、やはり一冊通してしっかりとた意図が見え、どうしてもSNS派のレシピはもう一歩何かあって欲しいなという思いが浮かんでしまう。

 

プロの本には調味料が無駄にならない工夫がある。私は五香粉が好きなのでよく使うのだけれど、好きになった理由はいくつかのレシピに登場していたからだ。それを実際に作って味に馴染むことが出来たからだ。1冊の本の中に何度か登場すれば、スパイスの特徴をつかむことができるし、そのおかげで常用すべきスパイスとなった。

 

また、一つの具材を無駄にすることもない。ちょうどスーパーで使い切りのようになるようなレシピが組まれているか、その食材を他のレシピでも試すことができるようになっている。例えば「紫キャベツ」は食べなれない人にはあの色が嫌だったりもする。結局刻んでサラダにするしか思いつかないのであれば、普通のキャベツよりも高価なものを購入するのはどうかと思う。でも、半玉を使い切れるようにレシピがいくつか掲載されていれば、「残った分はこちらにしよう!」と料理の計画を練ることができる。

 

そして、栄養価。1冊の中に肉、魚、野菜が程よく掲載されており、1か月はこの本のメニューだけ作りなさい!と言われても実行できそうな気がしてくる。朝昼晩いつ食べてもマッチする。しかも食材を使い切ることができるから、たまに高価な食材が出てきたとしても結果的には大きく散財することにはならない。たまに「結局家で作ると高くつく」という方がおられるが、確かに1品作るだけであればそういうこともありうるだろう。ゴージャスにローストビーフなど作ろうものならば、お店で出来あいのものを食べる分だけ購入したほうが確実に安いはず。

 

SNSからプロの料理家を目指す方も多いだろうし、独自に誰もが喜ぶようなレシピを作ることは簡単なことではないと思う。それを美味しそうに写真を撮ることだって大変なはずだ。それなりの機材もいるし、食器だって揃える必要がある。

 

 一つのレシピを世に出すにあたり、何度も作り、量を検討し、味のバランスをチェックし、その他私たち一般読書にはわからないようなご苦労があるに違いない。SNSのお料理は、見た目の他にも周囲の「美味しい!」という評価があるはず。そしてその評価はその時そばにいる人が基本になっている。一方でプロの料理家さんはどのジャンルでも対応しなくてはならない。子供にも高齢者にも料理のできない新婚さんにもアレルギーの人にもヴィーガンの人にも、それぞれに合わせてものを作らなくてはならない。そしてきっとこれから世に出るSNS派さんもきっとどこかでプロのレシピを参考にしているに違いない。

 

私が有元さんを始めプロの料理家さんの本を愛して止まないのは、プロのお仕事をリスペクトしているということが第一にあるが、この2冊のシリーズはそれがとても伝わるものになっていると思う。レシピの間にエッセイがあるのだけれど、それを読むことでもっとレシピへの思いが伝わってくる。なんだかまとまらない感想になってしまったが、結局言いたいことはこのシリーズは買って本当に良かった!ということだ。料理は誰もが簡単にできること。しかしそんな誰もが出来ることをプロとして仕事としたからの強い思いがひしひしと伝わってくる。普通の人でも料理が好きになれる、美味しいものをもっと自宅のキッチンで!と思えるようになる良書。