Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#305 協会が選んだ後継者による事件簿

 『ジーヴスと婚礼の鐘』セバスチャン・フォークス 著

ついにバーティージーヴスにも春が来るのか。

 

Amazonでおススメに上がってきたことから読み始めた執事ジーヴスのシリーズ。今までは文春文庫から出ている2作をKindleで読んだ。

 


P.G. Wodehouseによるジーヴスシリーズは本国では多くの作品が出ているらしいのだが、上記2冊にはいくつかの短編が抜粋され(恐らく出版年月日の時系列で)掲載されているに過ぎない。もう少し読みたいかなと思い検索してみたところ、こちらの作品がしかもUnlimitedで読める!とのことで、早速ダウンロードしてみた。

 

そこで気になるのが著者の欄だ。この本ではセバスチャン・フォークスが著者となっている。なぜWodehouseではないのだろう。しかもこの作品は長編だ。気になったので、もう一度巻末をチェックしてみた。すると、こうあった。

 

とは いえ 本書 は、 ウッド ハウス 財団 より 指名 を 受け た 著者 が 紡い だ〝 続篇〟 で ある。 出だし こそ 本篇 シリーズ の お 約束 といった 展開 で 物語 は 動きだす が、 この 一 冊 でしか 語り 得 ない 結末 に 向け ての 伏線 も、 始まり から そこ かしこ に たしかに 見 て とれる。 名作 が 書き 継が れる 際 の 宿命 とは いえ、 こうした ところ が 本国 各紙 で 本書 について の 評価 が 大きく 分かれ た 理由 の 一端 でも ある の だろ う。 序文 でも 述べ られ て いる とおり、 著者 は 今回 ウッド ハウス 作品 を 継ぐ こと への プレッシャー を 強く 感じ つつ も、 単なる 模倣 や パロディー には し たく ない との 思い で 書き上げ た と いう。

 

つまり、このフォークスという著者はウッドハウスの大ファンであり、財団が指名してジーヴスの続きを書くようにと生み出した作品であり、Wodehouseが生みだしたものではないということだ。なるほど、それで著者が違ったわけだ!

 

当然 ながら、 これ だけの 重責 を 担っ た 著者 は 只者 では ない。 セバスチャン・フォークス は、 英国 の 大手 各紙 で 編集 者 や コラムニスト を 務め、 ジャーナリスト として 活躍 し た のち、 欧米 で 絶賛 さ れ た『 よみ が える 鳥 の 歌』( Birdsong) の 刊行 で 一躍 ベストセラー 作家 となり、 その後 発表 し た『 シャー ロット・グレイ』( Charlotte Gray) は、 オスカー 女優 ケイト・ブランシェット の 主演 で 映画化 さ れ て いる。 二 〇 〇 二 年 に 大英帝国 勲章 を 授与 さ れ、 イアン・フレミング の 生誕 百年 にあたる 二 〇 〇 八 年 には フレミング 財団 の 指名 を 受け、 ジェームズ・ボンド・シリーズ の 三十 六 作 目 と なる 続篇『 デヴィル・メイ・ケア』( Devil May Care) も 執筆 し た。 いずれ も 現在 は 邦訳 が 手 に 入り にくい のが とても 残念 だ が、 緻密 な 描写 で 人々 の 心情 を 鮮明 に 浮かび上がら せ た 読み ごたえ の ある 作品 ばかりで、 本 作 の 執筆 を 依頼 さ れ た 理由 も 容易 に うなずける。 二 〇 一一 年 には、 BBC TWO チャンネル で フォークス が 四 回 にわたって 英文学 の 代表的 な 登場 人物 を 探究 する 特集 番組 も 放送 さ れ、 好評 を 博し た そう だ。 

 

 確かに厳選に厳選を重ねて選ばれた作者であり、ジーヴスを愛する思いに溢れる作品であったことは変わらないと思う。

 

ストーリーは相変わらずバーティージーヴスに助けられており、いつもの失敗のカバーのみならずバーティーの人生のキーとなる部分においてもジーヴスが大活躍するという話。大友人のビンゴは出てこないし、文春版には出てこない内容が多いとはいえ確かにそこにバーティージーヴスがいることでストーリーは展開している。

 

長いストーリーをそれなりに楽しく読んだわけだが、所々で感じた違和感は翻訳者の違い程度に思っていたのだけれど、まさか作者がWodehouse以外の人だったとは考えてもいなかった。しかし、これはこれでアリだと思う。

 

この先のジーヴス、日本語版のレビューを見るとあまり評がよろしくない。これは原書で読んでみるチャンスかも。このストーリーなら英語の勉強も楽しく進められそう!