Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#218 無添加な食生活、そうか江戸をお手本にすればよいのか!なマンガ

 『堤鯛之進 包丁録 (1)』崗田屋愉一 著

料理好きの浪人鯛之進は研屋をやりながら極楽長屋で暮らしている。

 

大変なマンガに出会ってしまった!この頃Amazonでのセールが多いせいか、ほぼ毎日のように密林探索状態で入り浸っている。久々に料理の本をいくつか購入しようと見ていたら、こんなシックな表紙が目に入った。「包丁録」というのも大いに気になる。

 

さっそく購入してみたのだがすぐに引き込まれてしまった。主人公は極楽長屋というとこに住む浪人で、名を堤鯛之進という。名前に魚の名が入るというのも珍しい。長屋に住むのは皆脛に傷を持つようなものばかりで、住人以外はあまり近づきたいとは思わないようなところのようだ。

 

鯛之進は浪人の傍ら包丁を研ぐ仕事をしている。町を歩き、包丁を研ぐ。腕も良いようで声を掛けられることも多いし、時には貰い物などもあるようだ。自ら包丁を研ぐだけあって料理の腕もなかなかだ。物語の冒頭は鯛之進が煎り酒を作るところから始まる。酒に梅干しと削りたての鰹節を入れて火にかける。しかも火からあげるタイミングの図り方もおもしろく、素振り300回が頃合い。庭に出て早速300回の素振りをこなし、さてごはんだ。

 

料理の世界はたった数年で新しい技術が登場し、どんどんと進歩している。つい最近を見ても、令和、平成、昭和では使う食材、使う器具、キッチンの機能なんかも随分と変わったことだろう。電子レンジが登場したのは1970年代で今は「温める」以外のたくさんの機能を持っている。炊飯器に至っては1950年代には製品化されていたそうだけれども、今やおこげだの玄米だの、パンの発酵までなんでもありだ。食材で言えば調味料だろう。長持ちするし、容器も手を汚さず簡単に最後まで使いきれる。

 

とは言え、我が家に炊飯器はない。一応レンジはある。というかオーブンレンジなので温めるだけのものとしては使ってはいないけれど、使用頻度もそう多いとは言えない。電気ケトルも一応持ってはいるけれど、ここ半年以上コンセントがつながれることもなくお湯を沸かすときは鉄瓶が活躍している。

 

料理が好きな人はネットや本やTVや動画など、いろいろなところから情報を得る。私はもっぱら書籍と動画がメインなのだけれど、得た情報を一つ一つ試しつつ自分の小さなキッチンを自分好みに整えるうちに、気が付いたらどんどん逆行し始めていた。ごはんは白米よりも玄米を土鍋で炊くほうが好みになった。その方が美味しく感じるし、時短になる。テフロン加工のフライパンはなぜか実家から送られてきたもの1つだけであとは全部鉄かステンレスのものだ。出汁は今や数百円で手に入るけれど、昆布としいたけを使って作っている。そのうち鰹節も自分で削れるようになりたい。

 

つまり「美味しい」を追求していたら、旬にこだわりを持つようになり、旬と言うことは出来てすぐのものを頂くということで加工食品を購入することが減った。出張に行けばその土地の野菜や発酵食品を見るのが楽しみでつい道の駅や地域のショップに立ち寄ってしまう。人間の体は口から体内に入ったもので作られているわけだから、体に優しいものを食べるようにしたい。産地も気になる。無添加の食品は保存料などが入っていないから長持ちしない。なので自分で作ることが増えた。家のストックから加工食品は減り、乾物など原材料的なものに取って代わった。

 

時代小説を好んで読んでいるけれど、やっぱり料理がテーマになっているものは読む前から期待値が高まる。江戸時代は冷蔵庫もガスレンジもIHもないわけで、保存も調理も今よりも手がかかっていた。一汁一菜の質素な食事のはずなのに、小説に出てくる食事はなぜかとても美味しそうに感じるのだ。お味噌汁一つを作るにしても、お湯を注いですぐにできる即席のものとは違い、丁寧に出汁をとり季節のものを加えるだけのほうが滋養がありそうに思う。どんどん自分の好みが江戸寄りになり、昔の調理について興味が湧いてきていた。そこへ、このマンガである。

 

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鯛之進はもらった鰯をいくつもの方法で調理する。日持ちさせたいものは糠漬けに、その日に食べるものは煮魚にと余すところなくちゃんと食べる。冒頭に煎り酒だって今なら瓶入りで売っている。むしろ煎り酒の作り方をこのマンガで初めて知ったくらいだ。

 

なんとこの本は今週2巻目が発売されるらしい。1巻目の内容を読む限りではこれは当たりだと思う。2巻目が楽しみ。