Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#135 そういえば江戸川と利根川の分岐点だもの貿易が豊かなはずだよね

 『入り婿侍商い帖 3』千野隆司 著

婿入り前から続いた因縁がついに解決か?

 

そろそろ完全に冬物に切り替えないとと思いつつ、ぐうたら本を読んでいる。今のところ11月からは完全に通常出勤な生活となりそうなのでそろそろ気合を入れなくちゃと思っているが、リモートが始まってから季節がずいぶん変わってしまった。まずは冬服を出さねば着ていく服がない。

 

さて、このシリーズ、調べてみると3巻ごとくらいのペースで続編が出ているらしい。ひとまずこちらの3巻目で序章扱いのシリーズは終わりとなる。簡単にストーリーを振り返ると、旗本の次男坊が米屋に婿入りするお話で、刀を振るうお侍な部分半分、商い物半分な流れとなっている。

 

3巻目では、角次郎が米の仕入れ先を開拓しようとまたもや実家の知行地がある野田に赴くのだが、引き続き関宿藩の闇米の調査の依頼から藩米の提供を打診されるというもの。一旦この巻にて目下の案件は解決となる。

 

この小説を読んで特に興味深かったのは北関東の水脈を利用した商いのシーンだ。今の深川あたりの細々とした河川の名前までは理解しておらず、地図をチェックしながら読み進めたのだが、江戸川がここまで役割の大きな川とは知らずにいた。特に関宿藩の水門は重要な貿易港だったようだ。しかも関宿は利根川と江戸川の分岐点である。関宿から利根川に入れば銚子まで行くことができる。銚子も魚介類や豆味噌醤油が作られていたはず。今の高速道路みたいな役割だろうか。

 

野田は都内から電車で1時間くらいの距離だが、当時は半日ほど川を行かなくてはならない。このくらいの距離ならば女一人でも行き来が出来たらしく、貿易用の大きな船から旅行用の中型船と途中途中の港を経由して回ったらしい。たしかに米の行き来であるから北から江戸への移動は多かったであろう。

 

あとは地酒。西の清酒は高額なうえに庶民の手には届かない。しかし米はあるわけだからとりあえず酒を造る材料はそろっている。素人の仕込みでは米がいかに良いものであったとは言え、そうおいしいものはできなかったらしい。そこで西から杜氏を引っ張ってくるわけだが、それも簡単にはいかないだろう。しかし酒を造ることができれば藩の財務は潤うわけだから、西での酒造りの経験がある杜氏は珍重されたに違いない。

 

時代小説=歴史ではないけれど、こういった文化背景に触れる部分を読んでいくと「実際はどうだったんだろう」とより興味が湧いてくる。学生の頃は時代小説なんて年寄りの読むものだと思っていたけれど、実際には江戸好き、歴史好き、地理好きなどなどそれぞれの興味範囲に刺激をくれるストーリーに触れたい人が読むものなのかもしれないと思うようになった。かく言う私も好きな料理の分野が出てくると、そこだけ急にストーリーが明るくなったような気持ちになり没頭してしまう。そのうちに産地にも関心が出て、実際に出向いてみたくなってきているが、それはコロナが終わってからかな。

 

とはいえ、近場なら行ける。寒くなる前に一度深川に行かなくては、とますます意を固めた。