Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#134 久々に筆があることを思い出す

『入り婿侍商い帖 2』千野隆司 著

大黒屋に婿養子として嫁いだ角次郎。米不足の大黒屋を支える。 

 

昨日に引き続き、米屋さんのお話。米屋さんのお話を読んでいるせいか、無性にお米のレシピというか、炊き具合というか、そんなことばかり頭に浮かぶ。

 

この年、江戸には米がなかったらしく庶民は困窮していた。白米に混ぜものをして量を増やして飢えをしのぐわけだけれど、令和の今を生きる身としては「雑穀ごはんなんて贅沢だわー」と当時の人が聞いたら目を剥きそうなことを平気で言ってしまいたくなる。普段玄米を食べていて、一度に3合炊くようにしているのだけれど、2合は玄米、1合はもち麦を合わせるスタイルが定着してしばらくたった。たまには違う配合もためそうかな、などとほうじ茶を呑みながらのんびり読書している。

 

角次郎は大黒屋の一人娘お万季と祝言を上げるのだが、このお万季は実は話すことができないということを嫁いだ後に知ることとなった。なんでも幼少の頃、自分のせいで祖父が亡くなったらしい。

 

小さい頃はおしゃべりだったと言う。だが祖父が亡くなってから、声が出なくなった。ある日やくざ者が町のものに難癖つけている所に遭遇してしまった祖父とお万季は遠巻きにその様子を見ていたのだが、かわいそうに思ったお万季が「おじいちゃん、助けてあげて」と声高に何度も言った。体力的にもかなうはずがないことがわかっていた祖父は声を荒げない様何度もお万季に言うのだが、幼いお万季はそれがわからない。だから何度も大声を出した。するとならず者たちは祖父に暴力を振るった。その怪我が禍して、祖父は4ヶ月後に息を引き取った。お万季は自分が大声を出すなと言われたのに何度も声高に話したから祖父が亡くなったと思っている。

 

だから若い男が怖い。祖父を殺したやつらと重なるのであろう。お万季が心を許しているのは父と書道の先生のみである。その書道の話が面白い。めきめきと腕をあげたお万季は筆跡を真似ることができるほどの腕前となった。書道の話が出るたびに久々に筆を持ちたい気になった。思えばずいぶん昔に京都へ行った時、写経のグッズを買ったはず。クローゼットの奥底から出してきたので週末ひっそり写経を楽しもうと準備万端。

 

2巻では米不足と佐柄木屋の嫌がらせがテーマとなっている。五月女家の知行地である野田にて米を調達したり、悪と対峙する角次郎にお万季が徐々に心を開きつつあるところで2巻が終わった。続きはまた明日。。