Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#669 大作は流れも速い ~「居眠り磐音 3」

『居眠り磐音 3』佐伯泰英 著

故郷へ。

 

現在シリーズで読んでいる作品がいくつかあるが、その中でも最も長い作品。

 

 

まだまだ続くことがわかっていながらも「進むの早いぞ」と思う程にストーリーが走り出している。豊後関前藩に3人の若者がいた。江戸詰めからやっと地元へ戻ったその日に事件は起きる。彼らの和は乱され、3人のうち2人が亡くなった。友に刀を向けざるを得なかった坂崎磐音は脱藩し江戸へと旅立つ。

 

江戸での浪人生活は周囲の善意に囲まれながら、その日暮らしの日々だった。そこへかつての友から、藩の現状がひどいものであるということを知らされ、更には磐音らが藩の未来を背負うものと思われていたのにこのような事件が起きたことは、すべて改革を潰そうとする藩内の勢力にあったと伝えられる。その友人も何者かに消され、いよいよ江戸に居る磐音の周りにも藩の手が動き始める。

 

今、豊後関前藩は宍戸文六という国家老の一派に牛耳られていた。特に財政はこの者たちにより藩を破滅させるほどの借金を追っており、その後始末を今度は磐音の父親になすりつけようと画策している。宍戸派は江戸についてから祝いの席を持ち、参加することが臣下の印と、まるで踏み絵のように江戸詰めの藩士の前に忠誠を突き付けた。情報を得た磐音は、当日その料理屋の前で店に駆け付けたものを全て確認する。

 

中には意外な人物も参加していたが、それは磐音の心に不安を呼ぶものでしかなかった。悩むよりも確認すべし。磐音は実際に本人に会い、話の場を設ける。そこでわかったことは、藩の状況は日ごとに悪くなるばかりだということだった。

 

御直目付の中居半蔵は磐音も一目置く人物である。現在の宍戸派の悪事に目を瞑るつもりがない唯一の人物で、磐音は中居とともに藩の改革に乗り出す。この年、藩主が参勤交代で江戸へ来ることとなり、中居と磐音は殿へ現状を報告し、藩のために新たに動くことを決めた。そして磐音も久方ぶりに故郷の関前へと旅立つ。関前藩のために何ができるか。必死に動く磐音たちは、将来に向かう大きな峠を越える。

 

磐音には許嫁がいた。奈緒は磐音自らの手により命を落とした親友の妹である。騒ぎは結局、友人らの家を取り潰しとする藩の達しにより終わりとなった。磐音は藩を出た後の奈緒を探し求めることに決めた。

 

私の偏見かもしれないが、男性著者の時代小説にはダイナミックな政治の動きがあり、必ずヒーローが現れる。妙にリアルで細部に渡り悪事の芽が仕掛けられている。藩政は現在で言えば企業のようなところかもしれない。集団生活の中で考え得るあらゆる美徳や悪徳は今もそのまま企業に引き継がれているようだ。それが私たち日本人の生き方生き様なのかもしれないが、時代小説の中で描かれる悪事は妙に生々しく感情が煽られる。

 

そのせいか、つい自分の現状に重ねてしまい、ますます時代小説の深みにはまっていくように思う。まだまだ3巻目、大作に圧倒されっ放し。