Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#046 言葉はつながっている、のかもしれない

「鉄塔」に掲載された寺田寅彦が分析する外国語と日本語のつながりの不思議について書かれた本。

言葉の不思議

言葉の不思議

 

 

梅雨らしい天気。本日をもって県をまたいでの移動も解禁、そろそろ日常が戻ってくることになると思う。私も来週からは完全にリモートワーク体制が終わり出勤となるのだが、窓から雨空を見ているとこのままずっと在宅で作業させてくれと切に切に願いたい。いち早くリモートワークから通常出勤に切り替わった人たちの声を聞くとやはりリモートワークのほうが利点が多いという。リモートワークなら雨に濡れながら出勤する必要もないし。

 

個人的には雨は読書や映画鑑賞も捗るので割と好きなほうだ。気分も安定するような、落ち着いた時間を楽しめる。こういう時は青空文庫だ。

 

ということで、寺田寅彦を選んで読んだ。この本は理学博士の寺田が日本語の「言葉」がどこか外国語につながっているようだと音からのつながりを追求している。言語学のようでありながら文化人類学でもあるような内容だ。

 

錨と怒り、いずれも「イカリ」である。ところが英語のanchorとangerが、日本人から見ればやはり互いに似ている。「アンカー」と「アンガー」である。 

 

こんな感じで延々と日本語のこの単語がギリシャ語で同じ意味を持つ単語にそっくりだ!という様な気付きを書き記した一冊である。言語学的な分析ではなく、あくまでも寺田が「不思議だ」と思うものを追求している。

 

日本語で言えば中国と朝鮮には何か近いものがあるかもしれない。単に距離的に近いということもあるが、中国語に至っては漢字が伝来しているので音も似てくるのかもしれない。更には中国語は日本より陸地がつながった朝鮮、蒙古、ロシア、ベトナムなどにより大きな影響を与えていただろうし、もっと言えばシルクロードもあったわけで中東との交易から何か共通する言葉も生まれていたかもしれない。中東までいけばヨーロッパだって目の前だ。

 

確かに似た言葉というのは沢山ある。朝鮮語などは日本が訳した西洋語をそのまま我が物顔で使っているので音が似たものも多い。「有料」「無料」「調味料」などは日本語で言えばそのままあちらの言葉になる。

 

系統の近い言語であればもっと似たところがあるのかもしれない。例えばロシア語とチェコ語だったり、イタリア語とスペイン語だったり、スペイン語ポルトガル語に至ってはそれぞれ自国語で話していてかなり通じるという。

 

興味深いのは昭和の初期にベンガリ語だのヒンドスタニ語だのズールー語だのの存在を寺田が知っていたということだ。言語学の博士であればそれぞれの系統だった言語の存在は知っていてもおかしくないが、もしかするとこの時期すでに話者が1万人を下回る言語の辞書なりが存在していたのだろうか。そのほうがよっぽど不思議に感じた。

 

言語はとても興味深い。一つをしっかり身につけてもいないくせに、学んでみたいという欲求は尽きない。ちなみに今一番学びたい言葉は台湾の中国語である。数ヶ月暮らしながら学べたら楽しいだろうな、などとリモートワークなのをいいことに台湾についてあれこれ調べては楽しんでいた。

 

県外の移動は解禁とはいえども、世界の玄関はまだまだ開く気配がない。台湾、早く解禁になってくれないだろうか。万全な予防体制で参りますので、ぜひお伺いさせてください。