Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#004 言語学者の留学生活に触れてみたーチェコ編

昨日の千野先生の『外国語上達法 』を読み終わり、そういえばもう一冊千野先生の書籍があったぞと本棚からひっぱり出してきました。

 

 

 それこそ語学の学習法関連の書籍は山のように読んできたわけですが、千野先生の影響でしょうか。東欧ロシア圏の研究家の言語に関する書籍を好んで読むようになり東欧ロシア語圏に関わっている方の書籍はためになるに違いない!と思うようなりました。実際多くの知恵をいただいて来ましたよ。例えば今後ご紹介することになると思いますが、ポーランド語の沼野充義先生やロシア語の米原万里さんや黒田龍之介先生などなど、多才でユーモラスな方が目白押しです。

 

この書籍は千野先生が留学生時代を過ごしたプラハを1995年ごろにお仕事で再訪された時の記録です。東欧は1989年のドイツ・ベルリンの壁の崩壊をきっかけに次々と共産党体制が崩壊していきます。今はもう覚えている方も少ないのかもしれませんが、千野先生が留学なさっていた頃、そこはチェコスロバキアという国でした。言語もチェコ語スロバキア語とスラブ語系の他言語(でもそっくりなんだそうですよ)で、ビロード革命を経て1993年にチェコスロバキアに分断しています。95年はすでに分断後ですから、先生は懐かしいチェコスロバキアではなく新生チェコ共和国をご訪問されたわけです。

 

この本の半分くらいはビールのお話で、チェコのビールがどんなにおいしいのかということが語られています。おいしさの秘密はホップが贅沢に使われていることと、チェコ流のビールサーバーにあります。そして残りの半分が古本屋さんのお話です。また文壇のお話も多くチェコ文学に明るい方には得るものが大きいと思います。

 

共産党時代には書籍にも厳しい管理体制が敷かれていたそうなのですが、ビロード革命後は発禁本がやすやすと手に入ったりする反面、旅行客をターゲットとする古本屋さんの経営戦略により貴重な古本が高騰したんだそうです。チェコは人形劇など芸術も盛んな国です。美しい表紙に惹かれて書籍に価値を見出す旅行者が多いんでしょうね。とはいってもこの本は1997年に出された本ですから、今はもう共産党時代の書籍の価格を知る人も少なく、高騰っぷりも想像の範疇なんでしょうけれども。

 

ネットのおかげでどんな秘境の言語も容易に学習できる時代となりました。直接音を聞くことなんてググれば一発で出てきます。昭和のど真ん中に学生時代を過ごされた方の努力は並みならぬもので、私なんかの「英語できない。頭に入んない。」なんていう弱音は努力したうちにも入らぬわ!と呆れられてしまいそうです。

 

天才言語学者の歩んだ道を垣間見る事のできる一冊です。