Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#475 センスが光る翻訳~「続・翻訳の基本」

『続・翻訳の基本』宮脇孝雄 著

誤訳をしないためにも。

 

翻訳家さんのエッセイを読むのが好きだ。翻訳家は私の憧れの仕事でいつかは夢を叶えたいと思っている。が、その道はとてつもなく険しい。語学センスのある人というのは凡人には想像すらできないレベルで語学を習得し、あっという間にネイティブも驚くほどの文章を書いたりする。中学生の頃から語学に関心があり、本当に語学が出来るとはどういう状態を言うのかという疑問を解決すべく初めて読んだ言語学の本がこちら。

 


学校のテストで良い点を取りました、くらいじゃ「〇〇語ができます」なんて言ってはいけないんだ!ということを知り、言語学という分野があることを学んだ。語学の面白さを知った、私にとっては思い出の1冊だ。それ以来、言語学者や翻訳者の書いた語学に関する本を読むようになった。

 

千野先生の他、宮脇先生の書籍もたくさん読んだ。こちらは昔読んだ本をもう一度読みたくなり、紙本で新たに購入したまま未読カゴに入れていた一冊だ。改めて読み「ああ、勉強したい!」という気持ちがムクムクと湧いてくる。

 

宮脇先生はSF、推理小説、ミステリーなどを数多く翻訳されている他、翻訳家の仕事についての書籍も執筆しておられる。いつか宮脇先生の翻訳講座に参加することが夢だが、まだまだ未熟であることを自分が一番よくわかっているので早く成長して先生にお目にかかれるようになりたい。今一番の目標だ。

 

宮脇先生は日本語も美しい。そもそも翻訳家は外国語から日本語に訳したものを読ませるわけだから、日本語がたどたどしくてはいけない。本書ではちょっと不思議な日本語訳と本文を比較し、どうしてダメなのか。どう訳すべきなのか。そして先生のお手本翻訳が出てくるので、読み物としての面白さだけではなく英語力を高めるにも役立つ。

 

まず、正しく翻訳することは基本だ。もしわからないことがあった場合、それは想像力を全動員してシーンを把握することも大事だが、推量で翻訳してはいけない。まずはわからない部分を分析、辞書に立ち返ることが大事だと言う。辞書だけに頼るのではなく、調べぬく。この頃はネットを使えばたいていのことは調べることができるが、昔は警察の組織図などを「翻訳に必要なので教えて欲しい」とレターを送っていたという。

 

調べる場合も英語の辞書だけではなく、国語辞典や百科事典など語としての意味の他、語のもつ文化背景をチェックする必要がある。ここでふと思った。この「調べる」という作業、ここを楽しめなくては翻訳を生業とするのは難しいのではないだろうか。私はたまたま仕事で「調べる」ということをよく行うので、それほど苦も無く作業に当たることができると思う。1つの文章に20個調べる単語があったとしても、わからない文法があったとしても、時間に余裕さえあれば多分やれる。ところが、これが無理ならばきっと辛い作業になるに違いない。例え仕事でも関心のない分野について調べるのはとっても面倒だしやる気も出ない。なかなか頭も動かなくて、結局無駄に時間を取ってしまう。そう考えると、私はラッキーなことにほんの少しではあるが第1次関門はパスできているのかも!と好意的に思い込むことにした。

 

宮脇先生の本を読むたびに「そういえばあの小説のあのフレーズ、意味わからなかったんだよなあ」とふと思い出す。せめて私の訳した仕事の資料ではそんなことが起きていませんように。いつかは私も!と夢の実現に向けて思いを新たにした。