Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#005 東欧専門家の書いた言語学本

外国語の勉強中やる気が完全に消えてしまった方へのおすすめとして、千野栄一先生の『外国語上達法』をご紹介しました。そういえば自宅に言語学者の本がまだあったぞ!と思い、本棚をチェックしてみたところありました!ありました!!『外国語上達法 』の中でもチラッとお名前の出ていたポーランド語専門の沼野充義先生の本です。

 

 

高校生の時に見た映画で『屋根の上のバイオリン弾きFiddler on the Roof)』という映画があります。ウクライナの小さな町に住むユダヤ人テヴィエ一家が主人公です。ユダヤの伝統は守るべきものというテヴィエ(親世代)と新しい時代に生きる3人の娘さんの葛藤がテーマです。「伝統」についての歌、下に貼りますね。

 


Fiddler on the roof - Tradition ( with subtitles )

 

沼野先生のこの本を購入した時、真っ先に上の映画のことを思い出しました。きっと「ロシア」と「ユダヤ」と「伝統」についてだろうなーと思ったのですが、内容は全く違うものです。

 

1986年、アメリカに留学された沼野先生の海外生活のお話から始まります。アメリカはアメリカなんですがほぼロシアとポーランドのお話です。アメリカは移民のるつぼと言われます。ポーランド人については「おばかさん」であるというアメリカンジョークを聞いたことがありますし、ポーランドに限らず多くの国からの移民に対するブラックジョークを知ってるよ!という方もたくさんいますよね。

 

驚いたのは移民のコミュニティーが強いというか、愛国心が強いというか、アメリカで生まれた移民の2世の子供たちで英語ができない人が多いんだそうです。80年代後半のお話ですけれど今もそうなのかしら。近い南米からの移民コミュニティがスペイン語のみで生活しているニュースは何度か見たことがありますが、ポーランドやロシアからの移民も自分たちのオリジナリティや文化に沿った生活をしていたんですね。

 

4年のアメリカ留学を終えた沼野先生、オランダからヨーロッパに入り車でふらーっと旅行に出かけます。その時のドイツやフランスでの思い出話もおもしろいです。

 

最後は言語学のお話で、日本に帰国後につづっておられる部分に続きます。言語学初心者にもわかりやすくはあるのですが、ちょっと固いかな?という気もしますがジェンダーなどに関心のある方には一読の価値ありです。