緊急事態宣言が延長になるとのこと、今年のGWは家でおとなしくドラマを見たり読書をしたりして過ごしています。このところFather Brown（ブラウン神父）という1960年代を舞台としたイギリスのドラマシリーズを見ていたこともあり、なんとなくイギリスに関する本が読みたくなりました。ちなみにこのドラマはAmazon Primeで見る事ができますよ！
手に取ったのはもう30年くらい前の本ではありますが、今でも年に数回は読み返しているイギリスに関するエッセイです。古い本で電子書籍化もされていないのですが、最初に書く感想文ですからお気に入りの一冊から始めたいと思います。
1993年の夏、ヒースロー空港へ到着した時のことはきっと一生忘れないだろうなーと思います。飛行機を降り、入国審査場まで続く長い廊下と英語だらけの広告、そして日本とは違う甘くてちょっぴり埃っぽい匂い。空港に到着しただけなのに「これが外国か！」と五感が大騒ぎするような興奮っぷりでした。さらに夕方到着便でのロンドン入りだったことも拍車をかけます。日本とは違って夜9時近くまで明るく、石造りで重厚な街並みと緑いっぱいのロンドンに惚れない理由がありません！私がイギリス好きになったのは紛れもなく到着した最初の日の印象が強かったことがきっかけです。
さて、なぜ初の海外にイギリスを選んだのか。それは学校行事だったからです。一応、出発前にはガイダンスなんかもあり、それなりに準備をしました。お会計の方法とか、レストランでのオーダーの仕方とか、みんなで何度も練習したのも懐かしい思い出です。英語授業もっとちゃんと聞いておけばよかったね！もっと勉強しておけば良かったね！などと後悔しつつ、成田で機上の人となりました。
自宅の文学全集の中で「イギリス」の巻が一番のお気に入りだった私は、観光ガイドやイギリス文化についての本を図書館から借り、出発までモチベーションを上げる＋自由時間のプランを立てるべく読書に励んだわけですが、友人が貸してくれたこの本はある意味群を抜いてぶっ飛んでました。「ああ、早くイギリスに行きたい！」という気持ちが抑えられなくなるほどに面白かった！その本とは、日本文学者で大学の先生が書いたイギリス文化の本「イギリスはおいしい 」です。
その当時のイギリス文化に関する本は英文学の先生が書いたものが主流で、小説の中に出てくる文化背景の紹介が主でした。でも大学の先生の本ってやっぱりどこか固いんですよね。この林望（リンボウ）先生は同じ文学でも日本文学の研究家と同じく大学の先生なのですが、どこか人情味のある江戸時代の時代小説を思わせるような口調でイギリスを紹介してくれています。イギリスのおいしかったりおいしくなかったりのお話は、先生がオックスフォードやケンブリッジに留学されていた経験談なのですが、イギリスについての事前情報を得ることなくほぼ白紙状態で現地入りされたそうで、既存の英文学者の諸先生方とは異なる視点からのエピソードが華やかです。特にタイトルからも想像できるように食文化の話はまるで落語でも聞いている（読んでいる？）かのようで、食べる事が大好きな方ならば絶対に楽しめるはずです。
イギリスとなると紅茶のお話が多いですが、私がおすすめしたいのはリンゴのお話です。落語でお蕎麦を食べるお話ありますよね？ずずっとお蕎麦をすする音だけで聞いているほうもおなかがすいてきちゃう。日本でもリンゴは生産していますし、種類も多彩でみなさんそれぞれお気に入りの品種があると思います。わが日本のリンゴだって今ではアジア各国では大変貴重で味もお墨付きの人気ものです。しかしイギリスのリンゴはすでに改良の必要もないほどに最初から完成されたおいしさがあるとのこと。私はこれを読み、どうしても食べてみたい、いや、絶対に食べるんだ！とto do リストに記入したのは言うまでもありません。
そしてイギリスと言えば、スコーン。この本にはそのレシピが載っています。今手元に単行本と文庫本の2冊があるのですが、今では単行本の購入は難しいと思いますのでぜひ文庫本でご確認下さい。なお、文庫にはあとがきの部分に本編のレシピより作りやすいカナダ版のスコーンレシピが掲載されていますので2重においしい本です。ほかのお料理についてもレシピ替わりになりそうなエピソードもありますので、（１）これからイギリスに行かれる方や、（２）イギリスの食習慣に関心のある方にはぜひ手に取っていただきたい一冊です。
