Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#606 イタリア通の食の裏話~「パスタぎらい」

『パスタぎらい』ヤマザキマリ 著

イタリアを中心に食のお話。

 

あれこれ美味しいものが多すぎて、週末は果物三昧の幸せな時間を過ごした。今回はリンゴと柿をメインに頂いた。果物は種類により味や食感が異なるので、好みのものを見つけるまであれこれ食べてみる必要がある。特にリンゴは時期によって種類が変わるが、サンつがるの柔らかい食感が好きなので今週末は山盛り食べた。つやつやなリンゴから芳醇な香りが部屋中に広がり、何とも幸せ。

 

秋は食べたいものが多すぎる。野菜も美味しい、魚も美味しい、果物も美味しい。止まらない止まらない。しかし、1日に食べられる量は決まっているので、毎日何を食べるかしっかり考えなくては、と食に関する本を読むことにした。

 

が、レシピ本はダメだ。あれこれ作りたくなるし、あれこれ食べたくなるし、頭の中が食べ物のことでいっぱいになりすぎる。そして欲しい本が多すぎる上に、レシピ本は紙のものを購入することに決めている。ものを減らすべき今、レシピ本はもっと片付けが進んでからにしたい。

 

となると残るはエッセイ。食にまつわるエッセイは面白そうな作品を見かける度にKindle版を購入してある。昭和から令和まで、楽しそうなものを見つける度に「いつ読もうかな」とワクワクしながら購入しているのだが、Kindleの中に食にまつわるエッセイが豊富にスタンバイされている思うだけで心が温かくなってくる。今回は最近購入した中から本書を読むことにした。

 

ヤマザキマリさんは漫画家でマンガ作品の面白さは誰もが知るところだが、エッセイもものすごく読み応えがあり、読んでて楽しさが止まらない。著者といえば、10代の頃からイタリアに住んでおられ、イタリアをテーマにした作品も多い。本書もタイトルに「パスタ」とイタリアそのものをぽーんと全面に打ち出しておられる。が、そのパスタを「嫌い」と言ってしまうから、逆にものすごく読みたくなる。

 

今まで「パスタ嫌いなの」とか「パスタ苦手なんだよねー」という人に会ったことがない。むしろ進んで食べたいし、食事に行こうかとなるとイタリアンを選ぶことも多い。考えてみればパスタって日本で言うところの白米みたいなものかもしれない。ソース如何でいろいろな美味しさを引き出せるところは、ごはんのおかずをあれこれ合わせるのに似ているかも。ピザにしてもパスタにしても、世界各地で愛されている。イタリアンの華やかさは今やお子さんにも大人気。しかしそのパスタを今日本で一番イタリアにお詳しいと思われる方が「パスタぎらい」とは!理由がどうしても知りたくなる。

 

著者がイタリアへ渡ってからのこと、どこの国でも学生さんはお金がないようだ。著者も素パスタのようなものをよく召し上がっていたとのこと。日本ならごはんに梅干し?おかか?いや、お茶漬けかな?それともお粥?それがイタリアだとオリーブオイルにニンニク、鷹の爪、塩、というシンプルなソースとなるそうだ。それを長く長く食べて来たことから、一生分のパスタは食べつくした。つまり、食べ飽きた、ということでパスタぎらいらしい。

 

本書はパスタがイタリアを代表するように、各国の食を通じた異文化論の著者バージョンというところだろうか。海外での食事情にお詳しい著者は、和食と海外の食事を比べ、その多彩さに触れている。「おいしい」と感じるのは味が全てではなく、その環境が作り出す部分もある。決して豪華ではないが、著者の子供時代のエピソードには著者ならではの「美味しさ」を築いた味覚の思い出が綴られている。よく思い出の食におにぎりを挙げる人が多いが、著者にもなんとも笑えるおにぎりエピソードがあった。

 

日本には現地そっくり、もしくは現地も顔負けのお料理を再現する能力があるらしい。海外で食べるお寿司には日本のものとはかけ離れたなんともおぞましいものがあるが、日本の外国料理は本国をも上回るような激ウマレストランもあるそうだ。パスタぎらいの著者でも食べたくなるイタリアンもあるらしい。これは以前に読んだマンガにも出ていたのだが、どうしてもイタリアでなくてはならない美味があるそうだ。

 

そう、それはポルチーニ。私は乾燥ポルチーニしか食べたことがないのだが、著者は死ぬ時にはポルチーニを口いっぱいに頬張りたいんだそうだ。息子さんにもしっかり伝えてあれこれ食べ方についても指導しているそうだ。キノコのパスタはとても美味しいが、本書を読んでポルチーニは想像をはるかに超える美味しさに違いないと、ものすごく食べてみたくなった。現地で、生のポルチーニを使ったパスタを食べてみたい。ポルチーニの下りはマンガよりも個人的には本エッセイのほうが2倍楽しく読めた。というより、エッセイ読んで食べたい気持ちが止まらなくなってしまった。

 

ポルチーニのほかにも多くの食材が登場する。そして、食の失敗もたくさん出てくる。それがまた面白い。読んでいると米原万里さんを彷彿させるようなものすごいパワー、そして文章から滲み出る「絶対面白い人だろう」と思わせるキャラクターが全開だ。今までいくつかの作品を読んできたが、エッセイでは本書が群を抜いて面白い。

 


在イタリアで活躍した日本の作家さんはたくさんいる。中でも女性の作家さんの作品は素晴らしいものが多く、改めてイタリアという国の魅力について触れてみたくなってきた。いつか行ってみたい国、第一はイタリアかな。