Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#575 お気に入りの本を学問として捉えてみたらこうなった~「英米児童文学ガイド 作品と理論」

英米児童文学ガイド 作品と理論』日本イギリス児童文学会

学問としての児童文学。

 

積読山の発掘は驚きと戸惑いの連続である。山は切り崩され、現在ダイニングテーブルの上に小山を作っている。毎日壁となった書籍を眺めつつ食事をとる日々だ。もともと広くもないテーブルがより圧迫されているので、どうにか今週中に片付けたいけれど、この量ほんとにどうしよう…。今はまず分別作業に当たっているのだが、買った本人も購入時期や目的を一向に思い出せないものがかなりあった。何かにハマった時に一気に関連書籍を買い集めてしまう癖があるので、きっと何らかの理由でまとめて購入しているとは思うけど、「ショッピングは計画的に」と過去の自分に耳打ちしたい気分。

 

中でも割と大き目の小山を形成している児童文学関連は、どうしてこんなにたくさんの量があるのか全くもって思い出せない。きっと何かに触発を受けて、その背景が知りたい!と思い購入→休みの日にまとめて一気に読むぞ!→まとまった休みなんて一切取れない→山に埋もれる→地層のかなり下の方へ・・・と、記憶の彼方へ追いやられてしまったのだろう。

 

とはいえ、やはり「読みたい」という気持ちがあって購入した書籍なので、いざ読み始めるとかなり楽しい。児童文学は子供も大人も楽しく読めるが、文学という学問として捉えた場合、どういう位置にあるのだろうか。分野の中でもジャンルや流派があるはずで、研究対象としてじっくり分析された内容を紹介しているのが本書だ。

 

全2部からなっており、1部は世界的に有名な17の作品を紹介、2部では「批評の理論と方法」として学問として捉える際の基礎知識が収められている。紀要論文集のような印象で、小さな頃から読んでいた作品の新たな面が見えてくる。ある小説はその時代の英国社会の様子を示していたり、児童書から文化背景や経済の様子まで読み取り、その当時の姿をよりリアルに思い描くものもあった。

 

お気に入りの作品についての見解を読むのは楽しくもあり、反発もありだったのだが、ここではE.ネズビットの「砂の妖精」について記録しておきたい。

 

何度読んでも毎回楽しめる本作品は日本女子大学の川端有子先生(2022年現在)が寄稿しておられ、著者にフォーカスを当てた内容だった。

 

ネズビットは英国のファンタジーを作ったと言っても過言ではなく、ドラマ化、アニメ化など今でも変わらず愛されている代表的な作家だ。ただ、この方はハリーポッターの作者であるJ.K.ローリングのように結婚生活ではご苦労なさっており、旦那が頼りにならず、子供を育て自分が生きていくために小説を書いた、という説をわりとあちこちで見かけることがあった。川端先生は、さらにネズビットの生きた英国が大きな渦に巻き込まれた始めた時期であり、当時の女性の立ち位置の変化にも注目しておられる。特に、ネズビットが社会主義に傾倒していたことなども挙げ、そのことだけに注目せず、ネズビットのもたらした文学が児童文学における分水嶺になっていることを頭に入れつつ読んでみよう!と仰っているように感じられた。

 

ところで、よくよく考えてみるとネズビット(1858-1924)の活躍した時期は、BBCドラマの「Peaky Blinders」の活動期と重なるじゃないですか。

 

 

Peaky Blindersは1890年代から1900年代初期にバーミンガムを縄張りとしたギャンググループで、シェルビー兄弟の生きざまを描いている。Netflixでおススメしたいドラマのうちの一つだが、「砂の妖精」の挿絵のせいか、同時代の物であることに軽い衝撃を覚えた。完全にネズビット作品のほうがずっとずっと古いと思っていたので、こんなに最近の人なんだ!というビックリ感がすごい。鎌倉時代の話だと思っていたら、実は江戸だった!くらいの気分である。まあ、ドラマだから少し盛られてる部分もあるだろうけど、それに気が付いてから「もしかしてイメージしてた世界ってもっと現代寄り?」と改めてネズビット作品を読みたくなっている。

 

しかしまずは小山を片付けなくては。児童文学関連、実はこれ以外にもかなりの数の書籍が積まれているので早い段階でサクサクと読んで、冬には児童文学三昧の読書を楽しめるように計画的な読書ライフを送りたい。