Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#540 雑貨が欲しい!な気持ちを抑えるためにドイツのお宅の本を読んでみました~「人生を楽しむドイツ式家づくり」

『人生を楽しむドイツ式家づくり』牧いく子 著

ドイツ人のおうち。

 

この頃ずっと移動しているので、初めて訪れる街に行く時にはものすごくワクワクする。これが旅行であれば行きたい所や食べたい物をチェックするのだけれど、出張となるとなかなか自由が利かないのは仕方がない。だから「これ!」というもの一つに絞り、もし万が一、ちょっとでも時間が取れたら行ってみたいと移動の間にあれこれ調べてみるのも楽しいイベントとなっている。

 

今回は以前からとても気になっている雑貨屋さんのある地域を訪れており、そのお店からほんの数駅の所にいるのだが今のところ時間が取れる気がしない。これもコロナ禍の影響だと思うが、最近はお店の営業時間がぐっと短くなったように思う。GWあたりからずいぶんと以前に戻りつつあるような感じもあるが、夕方になって「行ってみようかな」と検索してみると「まもなく閉店」の文字が出てくることが増えた。以前は8時9時まで営業していたお店も、今は1時間ほど早く閉店しているような感覚だ。早い所だと5時にはすでに閉店とかで、確かに食品を提供しているところは日々の売り上げの予測も付きにくく、少量を売り切るために営業時間の見直しなんかもあったのでは?と推測する。

 

それにしても車があればさっと行けるのになぁとここでもレンタカーに心惹かれるのだが、やっぱり安全第一。あと数回訪ねて道を覚えてからチャレンジしたい。

 

今回の雑貨屋さんツアーはあきらめることにしたものの、素敵なあれこれを見た今となると心が完全に支配されてしまい、お道具の世界から抜け出せない。ここはリセットの意味を兼ねてインテリア関係の本を読んでみることにした。こういう気分の時、むやみにショッピングしてしまう傾向があるので要注意。自分がどうしたいのか、本に教えてもらおうとKindle Unlimtedの中から本書を選んだ。

 

なぜドイツか。インテリア的には北欧勢が俄然魅力的なのだが、ドイツについていえばそれを維持する能力に着目している。雑誌で特集されているドイツのキッチンはまるでモデルルームかのような片付きっぷりで、いったいこれは撮影のためなのか、普段から綺麗を心掛けているのかが気になっていた。さらに「これはきっと撮影があるから片付けたに違いない」とか「インテリア好きな意識高い系の人を中心に取材したに違いない」と片付かない自宅を思い出しては完璧なおうちに打ちのめされるばかりだった。

 

本書を読んでドイツのキレイの維持力について知りたいと思った。今まで見てきた雑誌や書籍だとインテリアは驚くほどにムダがなく、見えるところに物を置かないことが基本状態だと思っていたのだが、本書は今までの書籍では見ることができなかった「日常」が収められている貴重な一冊である。

 

著者はドイツに生活しておられる間に知り合った人たちのお宅を訪問し、玄関、居間、キッチン、寝室、トイレなどの暮らしの空間をまとめている。特記すべきはそのお宅がすべて「普通の」お宅であるということだろう。アート業界の人や、インスタでライフスタイルをアップするようなお宅ではなく、いつもの生活で出会ったちょっと素敵なお宅の写真がいくつも掲載されているのが面白い。文章はとても短く、写真もプロがとったものよりも温もりや思い出のありそうな著者とそのお宅の方々との関係がうかがえるようなものが多い。

 

 

例えば↑のように片付いてはいるのだけれど、ものすごくアートを主張する空間とはなっていない。機能美というのともちょっと違う気もする。もしかすると本当は素晴らしい工夫があったりするのかもしれないが、本書はその筋の専門家が書いたというよりは、ドイツの生活を紹介するよ!お友達のおうちだよ!と、もっと手作り感があり家主との親密さがベースとなっている。ドイツの人がいつもきれいに片付いたおうちに人を招く習慣があるとは言え、それは親しい人をお招きして自分のおうちを見せる程度であるのが本来の生活のはず。もっともっと世界に発信したいという人はやはりインテリアをお仕事や趣味(しかもすごいレベルで)としている方なのかな?と考えるに至った。

 

そして、ついに見つけてしまった。キッチンがキレイの秘密。こういうことは生活している人でなくてはわからないだろう。

なんとドイツでは温かい食事は1日に1度だけでたいてい昼か夜に取るらしい。そして肉を焼いたり油で揚げたりという料理はキッチンでは行わず、外でBBQの要領で調理するとのこと。そうか。油使わないから汚れないし、シンプルな料理であればそんなに道具を取りそろえることもないのかな。聞いた話だとじゃがいも料理も今は簡単に作れるものがあって調理がものすごく楽なんだとか。

 

光の調整から写真を取る角度まで、すべてがアートを計算した写真とは違い、ひょっこり知り合いのおうちの写真を撮った感が逆に新鮮だった。B級グルメを食べた時のような満足感。本書を読んだおかげで、あれこれ欲しいという気持ちも少し収まったように思う。

 

とはいえ、やっぱりドイツの主婦のみなさまはキッチンをキレイにしているという話は変わらない。しかも広い!こんな広いところがあったら私なら嬉々として揚げ物作ってしまいそう。そしてきっとあれこれ買い込むんだろうなあ。

#539 新入社員が孫会社から子会社に異動になった上に課長に昇進…という感じでしょうか~「江戸っ子出世侍 別格与力」

『江戸っ子出世侍 別格与力』早瀬詠一郎 著

香四郎の出世、シリーズ第2弾。


 

どういうわけだかこのシリーズの主人公、峰近香四郎のことが気になってしまい、早速続きを読むことにした。幸い今週も移動が多いので読書時間もたっぷり取れそう。

 

タイトルにあるように武士の「出世」がどんな風になされるのかが気になるし、1巻目では香四郎自身が出世街道をひた走るというより、なんだかわけがわからないうちにお金が手に入ったりしていて2巻を読まずに様子が見えない所がある。

 


1巻目、ちょっとびっくりなことがいくつかあった。まず、いきなり養子に出た。継ぐもののいない遠縁の御家人の所で当主となる。そこに商人が出てきて突然大きなお金を手渡す。そもそも、この遠縁というのも嘘なのか本当なのか…。

 

御家人となって香四郎には役目が付いた。仕事を与えられたのは良いのだが、今まで冷や飯食いで毎日のらりくらりと過ごしていた香四郎なのに、なぜかあの「村正」をお奉行から与えられている。しかも徳川家の紋が入っており、見る人が見れば「この方は徳川家の…」とひれ伏すような一品だ。それをこの間まで貧乏旗本の四男坊が手にするって!!!

 

なぜこんな驚きの事態が起きたかというと、香四郎にはなぜかどんどんと役職が付き、この刀を持たされた。事の発端は御家人の家に養子に出されたことから始まり、いきなりお役目を与えられ葛飾州へと調査に出る。1巻目ではその刀でお奉行の敵を討った。村正を与えられるだけでも大きな出世ではあるだろうが、なんの功績もない新人に村正を与えることなんて稀なことに違いない。

 

2巻目でも引き立てられるのだが、今度はもっと驚きなことになんと別格与力という役割を与えられる。香四郎は一度御家人の家に養子に出たが、実兄が他界し実家に戻っている。旗本の身分に戻ったとはいえ、それでも唐突に与力の役目が付くという話なんて今まで読んできた小説にはなかった気がする。

 

会社で言うと、新入社員がどこか大手の孫会社のようなところから格上の子会社に異動となり、経験もないのにそこでいきなり課長になるくらいな感じだろうか。

 

2巻目ではなんと長崎奉行への命を受け、江戸にて抜け荷の調査にあたることとなった。また見えないレールが現れて香四郎は一歩出世街道を歩み出す。いざ調査にあたっている時は割と冷静に様子を見ているし、決して無能ではないはずだ。だが社会を知らない所があり、そのピュアさがまた魅力だったりもする。

 

一体だれが香四郎に目をつけ、本人には決して見えない出世の道を提供しているのだろう。ああ、やっぱり気になる!

#538 ペーパードライバー研修の前に~「カラー図解 あなたの”不安”をスッキリ解消!クルマの運転術」

『カラー図解 あなたの”不安”をスッキリ解消!クルマの運転術』菰田潔 著

写真いっぱいでわかりやすい。

 

実は先週、本だけ読んでも上達することは絶対にない!と自動車学校のペーパードライバー研修を受けてみた。以前読んだ本も良かったのだが、写真が多く評の高かった本を急遽書店で購入して自習し、講習に挑んだ。

 

 

2冊を読み比べ、本書のほうが読みやすくわかりやすいような気がした。「運転テクニックおさらいBOOK」は文庫本サイズで持ち運びには便利で、説明にイラストを多用していることから「運転はそんなに難しくないですよ!」なメッセージ性が感じられる。一方で本書はサイズはB5くらいだろうか。説明文も無駄がなく、写真を使った説明が多い。恐らく著者が実際に運転しておられるお姿だと思うが、サングラスで運転している姿は教習所の先生っぽくて、まるでレッスン中のような気分になれる。

 

本書で写真を見ながら説明文を読んでいるうちに、忘れていた記憶がスルスルと引き出されてきたようだ。講習は2時間の予約を取り、1時間は場内を、2時間は場外を走ったのだが本書で予習した甲斐は十分にあったと思う。

 

たった2時間、全くすっかり忘れた状態で講習を受けるのはもったいない。ライトの付け方とか、ミラーの合わせ方など、講習ではなくとも本書で学べることはたくさんある。予習をすることで「できること」「できないこと」がはっきりするし、ピンポイントで効率よく教えてもらうべきだと悟った。

 

運転席からこう見えてる、外からこう見えてるというのが写真で説明されているので、後から思い出して疑問に思った点は本書で一つ一つ確認している。感覚を忘れないうちに本書を持って、一度運転してみたい。

#537 評数多めの作品を読んでみました~「江戸っ子出世侍 お目見得」

『江戸っ子出世侍 お目見得』早瀬詠一郎 著

旗本の四男坊、出世なるか。

 

GWの余韻のせいか今週はものすごく長かった。とは言え、GW後の1週間はほぼ出張に出ていたため、長く感じたのは出勤した今日一日だけのような気がしないでもない。

 

さて、2か月限定、Kindle Unlimitedの本を読みまくろう!と決めてからというもの、ことあるごとに書籍を探している。本書はおススメのなかに上がって来たうちの1冊で、ものすごく評の数が多かったことから読んでみることにした。

 

主人公は貧乏旗本の四男坊、峰近香四郎。長兄以外の二人の兄はすでにそれぞれ道をみつけて家を出ており、長兄に世話になりながらのらりくらりと暮らしていた。両親もすでに他界し、長兄に頼りっきりの生活を送っているものの、その兄も体が弱く、旗本身分とは言え、お役目はない。五百石で細々と暮らしている。

 

そんなお家柄の香四郎の人生がある日を境に一転した。親戚筋とは言っても遠縁で行き来の無かった吉井家は、御家人の身分だが後継ぎも無く老人二人で暮らしていた。二人が相次いで他界し、後継ぎとして香四郎が推挙されたと言う。旗本とはいえ、四男坊では一生ぶらぶらするも同然、ならばと養子にと受け入れることなった。

 

早速葬儀を取り仕切り、吉井家の当主となった香四郎。そもそも峰近家も貧乏、吉井家も旗本よりも身分も落ちるわけで、家を継いで最初にしたことは借金の対応だった。そこへある商人が現れ、「実は吉井家の御家人株を買う手筈が整っており、譲り渡してもらう。」と言う。さらに驚くことには香四郎にはぜ御家人としてそのまま残ってもらい、本人は後見人として支えると言う。香四郎にはどんどん出世すべく、世の中を学んで欲しいと何だか怪しい話を持ち掛けて来た。「なんだこれは」と思いつつも、香四郎はその案にのっかり、まずはと指示通りに吉原へ出向く。

 

まだ22歳の香四郎、美人には目が無く商人に言われた通りに吉原を満喫した。下戸なため、酒より和菓子というのも面白がられる。不思議なことに、これをきっかけに本当に香四郎の運がどんどん開けたかのような展開になっていく。あれよあれよという間にとんでもない方向にひっぱられて行くのだが、当の本人はあまりよくわかっていないようだ。

 

現在の小説でもドラマになるような経済小説があるが、その江戸版みたいな面白さがあった。そして若者らしさがたっぷりで、おじさま読者ならきっとうなずける部分も多そうだ。

 

本シリーズは現在6巻まで出ているのだが、4巻までをKindle Unlimitedで読むことができるようだ。1巻目ではまだ香四郎を取り巻く背景が見えないので、もう少し読んでみよう。

#536 はっきりな物言いが逆にほっこりでした~「藪医 ふらここ堂」

『藪医 ふらここ堂』朝井まかて 著

藪か名医か。

 

今週はとある町でお仕事中なのだが、今回うっかり紅茶を持参し忘れてしまい1週間の脱ミルクティー生活を送っている。あと1日なのでがんばろう!なのだが、思えばコーヒーもコンビニ以外に買えるところがなく、ドリップ式のものをお部屋で淹れるか店頭で購入するかの2択だ。で、問題はもう少したっぷり飲みたい!コンビニもグランデサイズを置いてくれたら嬉しいのになあ。

 

本当はお茶でもゆっくり飲みながら読書を楽しみたい所なのだが、それも儘ならず近くのスーパーで買ってきたお惣菜を夜食として食べながら、ちょっとずつ本を読んでいる。本書もKindle Unlimitedの一冊でタイトルがよくわからなかったので選んでみた。

 

まず、気になったのは「ふらここ」という単語だ。表紙のデザインからは想像できるものはない。調べてみると「ふらここ」とはブランコのことで、なんと春の季語らしい。なるほど、一つまた学びとなった。

 

そのブランコと薮医がどう関係するのだろうか。医者、天野三哲が営む小児科はその名をふらここ堂と言う。名前の由来は庭にある山桃の木にブランコがあるからだ。町の子供が遊ぶのはもちろん、大人でも乗ることのできるしっかりした作りだ。

 

三哲には娘が一人いる。娘の名はおゆん、妻はおゆんを産んですぐに亡くなった。医者は蘭学や漢方など学びを受け、医者として独り立ちする頃にはなんとなく知性のオーラをまとったような姿となるものだと思っていた。身綺麗を心掛け、医院も清潔を保つ。ところがふらここ堂は医者の三哲は髪もざんばら、着物もだらしなく前をはだけている時すらある。見た目が完全に藪医者風だ。

 

ふらここ堂は神田にある小児科専門なのだが、なかなか患者はやってこない。しかも三哲が経営に全くもって熱心ではなく、朝寝坊は当たり前。患者が来ても「めんどくせえ」とおゆんを困らせてばかりだ。

 

しかし、ふらここ堂には近所の楽しい面々が集まってくることで、周囲はいつも賑やかだ。お向かいで早くに母を亡くしたおゆんをかわいがってくれたお安、その息子の次郎助は家業の水菓子屋を放って「医者になりてえ」と三哲の弟子となっている。産婆のお亀はふらここ堂でおやつから晩御飯までを調達している。人見知りが激しいおゆんは、同年代の若者よりも婆たちとのやりとりが楽しい。

 

ある日、身目麗しい父子家庭が神田にやってきた。薬種問屋に勤める佐吉はもと武士で、息子の勇太はまだまだ幼い。佐吉はなぜか三哲の腕を買っていて、三哲の適当そうな言葉からも真意をつかんでいる。まだまだ小さい勇太を男手一つで育てるのは難しく、何かとふらここ堂に集まる面々が佐吉を支える。お安とお亀は完全に佐吉狙いなのだが、その取り合いの様子も面白い。

 

三哲は実はかなりの名医なのかもしれない、という事件が起きた。なんと佐吉の薬種問屋から吉原での接待目的で大量の薬を買い、なかなかはけないことから「丸薬を作る!」と言い出した。その噂が町に広がり、なぜか患者が増えてきた。患者が増えれば「あそこは名医」との噂が広がる。そして恐ろしいことにその噂はお城まで届いてしまう。なのに三哲は相変わらずで、がははと笑い、酒を飲み、朝寝坊で「めんどくせえ」を繰り返している。しかし、やはり三哲の治療にはどこか筋の通った、子供の体を守るだけではなく強く育てるという信念がにじみ出ている。子供の免疫をどう育てるか、そこが三哲の考える医療ともいえるだろう。

 

やっぱり人との関わりの深いお話は、ふれあいの中から江戸らしい人情や笑いが詰まっており、とてもほっこりな気分。中でも同世代の友人が幼馴染の次郎助しかいないおゆんが、人見知りながらも若者組と接しつつ大人になっていく様子にほろりとする。江戸の人々はわいわいと周りと共に暮らしていると思っていたが、考えてみればおゆんのように人見知りだったり、人との会話が苦手だったりという人だっていたわけだ。

 

江戸が舞台の小説はフィクションとはわかっていながらも、なぜか現代が舞台の小説よりもぐっとくることが多いような気がする。選ぶ言葉が異なるからという理由も大きいが、現代が少し遠回りに心を表現する一方、江戸はストレートな直球さながらの口の利き方なのでわかりやすい。好きは好き、嫌いは嫌い、そんなはっきりした様子が心地よいのかな、と本書を読みつつ考えた。「ばばあ!」「ばばあって言うな!」のやり取りに逆にほっこり。テンポ良い会話、楽しいなあ。

 

#535 ペーパードライバーの私でも安全に運転できるようになりたいのです~「運転テクニックおさらいBOOK」

『運転テクニックおさらいBOOK』和泉自動車教習所 著

ペーパードライバーがドライバーになるために。

 

GWの間、実はずっと緊張しつつ数冊の本を読んでいた。そのうちの一つが本書である。なぜか本書かというと、仕事で非常に交通の便の悪い場所へ定期的に行くことになったからだ。

 

そう、私はペーパードライバーである。ものすごく前に運転免許を取得した後、一度も運転したことがない。つまり、教習所の車以外のハンドルを一度も握ったことがない。これから定期出張に出る先は公共の交通機関もJRしかなく、そこから車でさらに移動しなくてはならないのだが駅からの足がない。ということで、苦渋の選択でレンタカーでの移動を検討しているところだ。

 

本書は本当に本当に本当に初歩レベルを対象に書かれており、運転席への乗り方、シートベルトの締め方、窓の開け方、ドアのロックの仕方、エンジンのかけ方など、まさに自動車学校で教わる内容がそこにある。

 

文庫本の小さな書籍だが、ペーパードライバー目線では内容の多い1冊だと感じられた。そもそも今ならどんな情報を出されても「なるほど!」なので、ペーパードライバー以外の人が本書をどう利用するかはわからない。しかも教習所の書籍などずっと前にどこかへ行ってしまったので比較もできないのだが、手元に教本がない場合、割と安価で購入できる本書ならあっても良いかもしれない。

 

どうしてこの本を購入したかというと、右側通行の国から日本に帰国し、交通ルールが曖昧かも,,,と自覚することがあったからだ。例えば、助手席に乗ろうとして運転席のドアを開けてみたり、信号が赤でも車が来てない時には道を渡ってしまいそうになったりと、何度も笑われたり注意されたりということがあった。

 

本書には交通標識や路面に記されるサインなども説明されており、一先ずルールについてはある程度把握したつもりだ。普段は電車での移動が多いのだが、珍しくタクシーを利用した時、交通ルールや、なぜ今タクシーがこういう動きをしているのかが分かったような気になっている。他人の運転する車に乗っているだけでも学びは多いのだが、今まで自分が運転するという目線で車の動きを見ることがなかったので、本書のおかげで「乗っているだけ」から人の運転から学ぶことを知った。本当に少しだけれど車のルールがわかり始めている。

 

本書一冊読んだだけで何年ものブランクは埋まるのか!?いえ、無理だと思います。ハンドル握らないことにはきっと何にもできないと思われる。本書を熟読しわかったことは、研修なりレッスンなりをしっかり受けずに公道に出てはならない、ということだ。

 

時間を見つけてちゃんとレッスンを受け、自分も周囲も安全であることが確信できるまで、ちゃんと練習しようと決心。

#534 長屋の話には学ぶところが多いです~「『日本橋本石町やさぐれ長屋」

日本橋本石町やさぐれ長屋』宇江佐真理 著

本当の名は弥三郎長屋。

 

5月に入り、本格的に夏に違づいている感がある。梅雨の話もちらほら出てきたし、夏のイベントの話も出てきている。来月には政府も水際対策を緩和なんて言ってたし、また銀座が賑わってくる日も近いのだろうか。いつも通りの夏が待ち遠しい。思えばちょうど1年前は東京オリンピックだったのかーと感慨深い。

 

さて、Kindle Unlimitedの読みたかったシリーズを次々と見つけ出しては読んでいる。こちらも前から気になっていた作品でやっと読むことができて嬉しい限り。

 

日本橋の本石町の裏店に弥三郎長屋という築30年余りの建物がある。住むもの皆、糊口をしのぐのもやっとというところだ。それぞれがどうにか仕事を持ってはいるものの、決して余裕があるわけでもない。ここでも井戸を中心に女たちが集まり、長屋ならではの結束がある。

 

とはいえ、単なる面白可笑しい長屋話ではなく、本作はむしろ長屋の貧乏が故の人情に加えて、人の性というか、人が持つ裏の面が書きだされてる。そこに深みが醸し出されており、生きることそのものがにじみ出るような作品だ。

 

本作は宇江佐真理さんの後期の作品のようで、酸いも甘いもすべてが詰め込まれたような円熟のなせる業を感じずにはいられない。毎日の生活の中で、ふと「ああ、もう嫌だ!」と思った時、人はどのようにそれを耐え忍ぶのだろう。ただぐっと我慢する人もいれば、心の逃げ先もしくは本人そのものが逃亡することだってあるに違いない。思いやりがおせっかいになったり、憎しみが愛情に変わったり、そんな人そのものに見る面白さにどんどんと引っ張られていく。

 

弥三郎長屋がやさぐれ長屋と呼ばれるのは単なる言葉遊びのようなものだが、その名の通り、日々の生活の負の面に対してどこかやさぐれてしまいたくなる瞬間が描かれた見事な作品だった。ある一日を切り取ったような、まるで風景画を見ているかのように、住民一人ひとりにスポットライトが当たるのだが、それがまた見事に人間味に溢れている。

 

マイナス寄りかな?と思った時、いつも現実逃避のように読書をしている。本書に出てくる長屋の人々は実に実直で、すなおで、大望はなくとも欲はある。かといって、常に自身の徳ばかりを優先するのではなく、長屋が、江戸が良くなることを願う心意気に関心させられた。こういうところから学ばなくては。

 

やっぱり宇江佐真理さん、早すぎました。もっともっと作品に触れたいが、読めば読むほど「ああ、あと数作しか残ってないのかー」と悲しくなる。