Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#896 濃くて甘くて。~「夜叉萬同心 2」

『夜叉萬同心 2』辻堂魁 著

ビターチョコも加えたい。

 

昨年退社した同僚は1年ほど自由を満喫中で退社後は旅を楽しんでいる。旅から戻る旅に連絡をくれ、土産話を聞かせてくれることを楽しみにしている。今回はベトナムに行ったとのことで私の好きなベトナムコーヒーを山ほど買ってきてくれた。ベトナムコーヒーは専用のドリッパーで淹れるのだが、今回スタバのVietnamese coffee filterまでプレゼントしてくれた。今自宅で使っているものは以前にハノイに出張に行く同僚にお願いして買ってきてもらったもので、市場で売っている一家に一台的なスタンダード型でステンレス製だ。今回頂いたスタバのものはスタイリッシュなデザインでなんだかかっこいい。アルミ製でとても軽く、作りもしっかりしている。アルミは熱伝導が良いのでコーヒーを淹れた後は熱くなるので気を付けたい。

 

私が気にっているベトナムコーヒーはものすごくベタだけどリスの絵のついたCON SOC COFFEEで、たっぷりのミルクで飲む。本来は練乳で飲むのが本場流なのだろうが、練乳だと甘みが強すぎるので私にはミルクが丁度よい。

 

本当はすぐにでも飲みたかったのだが夜に眠れなくなることを思い、成城石井のディカフェのドリップコーヒーを飲みつつ本書を読む。

 

硬派な時代小説で、読み応えがある。


2冊目も夜叉萬こと七蔵は堅実に江戸の平和を守っている。1冊目の事件で出会った音三郎という武士がいる。二人は馬が合い、その後の捕り物などにも手を貸してもらうなどの付き合いが続いている。七蔵は親しみを込めて「音さん」と読んでいる。その音さんは兄の仇を討ち一度藩に戻ったのだが、この度また藩の事情で江戸へ戻った。

 

そしてまた新しい人物が七蔵の生活を盛り上げてくれている。まず、捕り物を手伝う樫太郎が七蔵の家の離れに住むこととなった。遠くから通うよりも同じ家のほうが便利との理由だが、家を切り盛りするお手伝いのお梅にもかわいがられて家の中が明るくなった。加えて母方の姪のお文が武家で行儀見習いをしたいとやってきて、家の中はいつも笑いが絶えない。

 

2冊目に入りより小説の味がぐっと深みを増す。悲しみが生んだ事件が多く、七蔵の優しさが心に染みる。すべては永代橋の事故から始まった。その日は深川の富岡八幡宮の祭礼の日だった。あまりもの多くの人々が祭りに参加しようと深川を目指した。皆が深川を目指す中、徒歩で橋を渡る者もいれば川を船で移動する者もいる。もちろん裕福な者が川を使っての移動を選び、そのために橋の通行を一時止めるなどの処置がとられたことから人々の行動は統率できないものとなる。橋の通行が解放された途端に人々は深川を目指して移動した。祭りに興奮した人々が一気に橋を渡ったことから事件が起きた。橋がその重さに耐えられず崩落、次々と人が大川へと落ち、その数は数千名にもなったと言う。

 

川へ落ちた中に武士の夫婦がいた。祭りへと向かっていた二人は大川へ落ち、二人はどんどんと流され生き別れてしまった。夫は一命を取留めるも妻が見つからない。しかしきっとどこかで生きていると信じ、必死に探し続けるも妻の姿は見当たらない。川から海へと流れたのかもしれぬと漁師町まで探しにいくが、妻はどこにも見当たらない。そしてある日、夫の亡骸が見つかり、七蔵は調査に当たる。

 

その事件で縁ができたのが猫の倫だ。まるで七蔵の心がわかるかのように、そして七蔵も倫の言葉がわかるかのような気がする。事件の後、倫は七蔵についてきて、ついには七蔵の家で暮らすこととなった。真っ白でかわいらしい倫は萬家で歓迎され、特にお文とは仲良しだ。

 

その倫が連れて来た縁もある。ある日家の中から子供の声が聞こえて来た。近所の子でも遊びに来ているのかと思った七蔵だが、話を聞いて心を痛める。倫に連れられてやって来たまだ4歳の女の子は火事で両親を亡くし、6歳のあんちゃんと二人で暮らしているという。あんちゃんはたった一人で一切の家のことを引き受け、妹を支えているという。6歳なんてまだまだ子供だ。しかし家事をこなし、どこからかお金も稼いできているという事実に萬家の面々に彼らのことを守りたいという気持ちが湧く。

 

その頃、赤蜥蜴という窃盗団が再び江戸に現れた。北町奉行所でも全力を挙げて赤蜥蜴を追うが、簡単には奉行所の手には落ちない。七蔵は残された小さな証拠から赤蜥蜴に迫るが、その調査には樫太郎、嘉助、お甲といつもの手の者に加え、音さんの協力を得つつ悪へと迫っていく。そしてその悪の手のすぐそばに意外な人物が捉えられていた。

 

1冊にいくつかの事件が混在しており、愛憎が入り交じりより悲しみが深くなっている。とにかく内容が濃くて、渋みもえぐみもすべてが詰まっている。1冊目を読みハードボイルドが過ぎると思ったが、2冊目になってその傾向に人の温かみが加わりシングルモルトにビターチョコといった感じ。そうそう、ベトナムコーヒーの濃さみたいな感じ。濃くて甘くて。

 

今からもう3巻目が楽しみすぎて他の本を手に取りたい気持ちが皆無です。