『書店員 波山個間子 2』黒谷知也 著
本のプロ。
この間、本書の1巻目を読んだ。それがなんだか頭から離れずしかも青髭ブックスに行く夢まで見てしまうほどで、潜在意識の何かが波山さんに共鳴しているのか?と思うほどにずっとこの本のことを考えていた。1巻目を再読し、2巻目も読む。
書店員の波山さんは食費を削って本を買うほど読書が大好き。接客は苦手だが今はブックアドバイザーという肩書をもらい、日々お客様も要望に応えている。
表紙には今回紹介されている書籍が描かれているが、今回も波山さんが紹介するに至る過程が面白い。
こんな無茶ぶりでもちゃんと波山さんは答えてくれた。
このくだりが好きだ。波山さんが真剣にあっと驚くような本を探している場面ではいろいろな小説が頭の中を駆け巡っている。波山さんはどちらかというと小説、それも純小説が好きだ。おそらくディープな専門書なんかは読まないだろうが、文化に関わる書籍は読んでいるような印象がある。推理小説も小説のうちだが、純文学とはちょっとずれる。しかしやっぱり波山さんは面白い作品を知っていて、それがお客さんのツボにはまるだけではなく、波山さんの説明を聞いている人がみんな「それ、読みたい」と思うほどに熱のこもった説明は「本」をより魅力的にする効果があるようだ。
恐らく、波山さんが何よりも本を愛していることは置いておいて、彼女がお世辞を言えるほどに世間慣れしておらずむしろ頑固一徹な人であるから、言葉に重みが出るのだろう。あの波山さんが言うのだから絶対に面白い!と人柄そのものに説得力がある。
波山さんの様子を見ていると、自分も自信を持ってプレゼンし相手に信頼を得ているかが不安になる。口先だけでその場をやり抜けようとしてはいないだろうか。
私も波山さんのコメントに本書に出てくる作品を数冊購入してしまった。読まなくちゃ!な気分になってしまったのだから波山さんのプレゼンは相手に訴えかけるものがある。プロは波山さんのようなタイプを目指すべき!
それにしても読書離れで街の書店がどんどんと減ってきているという。波山さんのようなアドバイザーさんがいれば書店の維持は可能になるだろうか。書店経由の購入で電子書籍の売り上げの一部が書店さんに行くようなシステムは作れないのかしら。いや、こんな単純な案はすでに誰かが考えているはず。波山さんの姿に書店の今後まで妄想してしまった。