Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#795 21冊目で初めて知った万松の出会い~「本書おけら長屋 外伝」

『本書おけら長屋 外伝』畠山健二 著

万松の出会い。

 

この頃ものすごく忙しい日々が続いており、書店に足を向けることができずにいた。加えて東南アジアでひいた風邪が全く良くならずで、体に負担がかかっていることもあってか能率が悪い。これは気分転換せねばと昼休みに書店へ走った。

 

大抵の書店は入口近くに新刊を並べる棚がある。そこに最近読んでいる小説の続編がいくつかあったので早速購入。行きはあんなにもぜーぜー言いながらだるさを我慢して歩いて行ったのに、帰りは小躍りしたくなるくらいに足が軽くなっていた。本の力、偉大なり。

 

さて、おなじみのおけら長屋が外伝で登場です。

 

春と秋は確実に大笑いできると確信できるのは、このところ本シリーズが春秋のタイミングで発行されるからだ。この春に20巻目が発売され、この秋は外伝としておけら長屋のアイドル的存在である万松こと万造と松吉がどのようにおけら長屋にやってきたのかが語られている。

 

万松と言えば、禍のもと。世の道理など通りはせず、己の欲望のままに毎日を楽しく過ごすことがちゃきちゃきの江戸っ子であると信じて止まない万松の二人だが、彼らが出会ったのは長屋へ来ての事らしい。

 

そもそも「おけら」は賭けに負けて一文無しになった人のことを指すことばだった。それが長屋の名前についているほどなので、貧乏人しか住んでいませんよーと自らがアピールしているようなものだ。いつも酒だの賭け事だの吉原だのと万松の財布は常にから同然。手代だというのに待ったく手持ちの金がない。ということで、界隈でも最も安いおけら長屋へ引っ越さざるを得なくなってしまったのである。

 

さて、おけら長屋は長く大家の徳兵衛が請け負っていた。左官八五郎はすでにおけら長屋に住んでいた。腕の良い左官でありながらもおけら長屋に住んでいるのは、こちらもまた散財するからである。万松にすらからかわれる八五郎とお里夫婦はおけら長屋の要である。そんな八五郎と万松の出会いがこれまた笑える。

 

浪人の島田鉄斎がおけら長屋に入る前はどのようなメンバーだったのかがわかる一冊。そう、どうして金太がやってきたのか、これも楽しいお話だった。

 

外伝はおけら長屋のとんでもなさが爆誕するまでのお話が詰まっている。本書はある程度、そう20巻目くらいまでのストーリーを把握してから読むくらいがちょうど良いのかも。万松がおけら長屋に合流したのが運の尽きというか、開運のスタートというか、笑いの始まり、なのである。