Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#871 大奥に学ぶ:明るさと幸せを周りに広げる力~「大奥づとめ」

『大奥づとめ』永井紗耶子 著

女の働き方。

 

やはり1月、ものすごく寒い。温かいものを食べて元気になりたいのに、そんな時に限って出張後の買い出しに行けておらず、冷蔵庫がほぼ空だった。ああ、お汁粉食べたいなあ。そうだ、お餅は蓬餅にしよう!あとお口直しにお漬物も準備したいな。など、いろいろなお汁粉妄想を楽しみながら結局お茶漬けを食べる。

 

せめて温かいものを飲もうとほうじ茶を淹れ、気分転換になる本をとKindleの中から本書を選んだ。大奥といえばよしながふみさんの漫画を思い出すが、本書はそれを超える楽しさがあった。そして女性であれば共感できること多々、モチベがあがる。

 

大奥は将軍家の奥を預かり、将軍の妻子が暮らすところだ。切り盛りする人々もみな女性で、力仕事も女性がこなす。本書はその大奥で働く女性たちの物語が収められた短編集である。

 

大奥で働くには本来旗本以上の身分が必要で、それに属さない場合は旗本家に養子などとして入り、その身分を持って大奥へ行く。よって元は町人なども働いている場合があるのだが、大奥に入ってしまうと身分よりその人の持つ能力が意味を成す。女性が社会で活躍するようになったのは実はものすごく最近のことである。この度JALの社長に女性が就任されたことが話題となっているが、江戸時代の人が聞けば世の中がおかしくなったと大混乱に陥るだろう。

 

そんな中で大奥は唯一女性が昇進を実現し、自分の能力を活かし、存分に働ける場所であった。知恵のある女性は千代田のお城以外では小賢しいと疎まれるが、大奥ではそれが力となるのだ。大奥はすべてが女性によって執り行われており、その部署を束ねるそれぞれのお役目のトップになることが彼女たちの昇進の道である。上様のお手付きとなり子でも成せばそれも昇進とも考えられるが、大奥の女性は政治での仕事での昇進を望み、そこに生きがいを感じているものもいる。そしてそんな女性を「お清」と言い、逆に上様の手の付いたものを「汚れ」と言った。

 

いろいろな立場、いろいろな職種の人が現れるのだが、女性だけが働く場所となるとウーマンリブできな強さばかりを想像しがちだ。しかし本書は語られる言葉の美しさのせいか読んでいると気持ちが和らいでくるのだが、同時に彼女らの前向きな様子に励まされがんばりたい気持ちがむくむくと湧き上がる。

 

お正さまという女性がいる。彼女はもともと夕顔と呼ばれていた。彼女のまっすぐに夢を叶えようとする姿が一見滑稽なのだが、実に人間味があり、心洗われる。夕顔であった頃は掃除や雑務をこなす体力資本の御末という仕事についていた。時には駕籠をかつぎ、朝から晩まで何よりも力を使う仕事であった。夕顔はおかめに似ている。しかし上様のお手付きになることを望み、そしてそれを公言している。時におしろいを塗り、紅を付け、笑いの種になることも多いのだが、その心根は周りを明るくする強さがある。

 

その性格を見込まれ妃の側に使える御三というところに引き抜かれるのだが、そこでも彼女の心は輝いている。名が夕顔からお正に変わるが彼女の魅力は変わらない。内側から明るく輝くような、周りを幸せにする力のあるお正に心奪われた。

 

がちでワーカホリックな人々だが、女性の活躍のストーリーをいくつも読んでいると女性ならではの力の出し方が見えてくる。自分を内側から輝かせる道を持つこと、それが昇進への第一歩なのかもしれない。ちょっとがんばって働いちゃおうかな!と思える一冊。女性は是非読んで。