#546 新幹線のおともには時代小説~「剣客定廻り 浅羽啓次郎 非番にござる」
『剣客定廻り 浅羽啓次郎 非番にござる』志木沢郁 著
拾ってしまう。
やっぱりこの小説には抗えなかった。新幹線の移動が増えると時代小説が読みたくなるのはなぜだろう。そして啓次郎の知的で真っすぐなところに惹かれ、ついつい2巻目を読み始めてしまった。
啓次郎の本職は定廻り同心だ。今回も担当の街を歩いていたら、番屋にいる記憶喪失の女性に出会い、なんと自宅で面倒を見ることになった。啓次郎の義父は卒中を患ってから半身不随となり、店子のたきに日々面倒を見てもらっている。
啓次郎の住む八丁堀の屋敷には医者と哲学者が間借りしている。たきはその哲学者の娘だ。父の傍で学んだことの力なのか、なぜかたきだけが義父の言葉を理解できる。とりあえず養父もたきも、この記憶喪失の女性が気の毒であると家に迎え入れた。ひとまず名前が無くては不便だとお雪という名を与えられる。
お雪とたきは気も合うようで、二人で養父の面倒をみつつ浅羽家を支えている。啓次郎はお雪の言葉や行動の端々から武家の出ではないか?とあたりをつけ、捜査に当たった。だが、その調べが思いがけず大きな話となってしまう。
啓次郎はもともと旗本の身分であるせいか、同心でありつつも身分のあるお武家との対応にも堂々としたところがあって頼もしい。読んでいてもすっきりとした気分になれるのでさくさく読み進められてしまった。
本書、残りはあと1冊。続編が出てくれないかと楽しみにしているところ。