#843 菌との共存で腸活はかどる~「9000人調べて分かった腸のすごい世界」
『9000人調べて分かった腸のすごい世界』國澤 純 著
腸活。
12月に入っても最高気温が15℃程度の東京。暖冬の影響が年々色濃くなっている印象が強い。12月に入ってから冬のコートを着始めたのだが、ちょっと歩いただけで暑くなるので、今ものすごく着るものに困っている。来週は寒波到来とのこと、やっと本格的なコートシーズンに入るかとは思うが、今年はこの温かさのせいで夏あたりから徐々に体調が不安定になっている気がし始めた。
確かにこれといって運動をしているわけでも、食生活に気を付けているわけでもない。体重もゆるゆる増加傾向にあるし、思えばここ数年健康診断すら行けていない。この不調は来年は本気で健康について考えろ!という警鐘なのかもしれないと、まずはできることから始めることにした。
本書はこの頃仕事で調べごとをしていた時に気になっていた本で、第二の脳とも言われる腸の機能と最近の研究により新たにわかったことなどをわかりやすくまとめた一冊だ。
腸。何メートルもの長い管状のものがお腹の下の方にぎゅうぎゅう詰めに入っている消化後の次のステップを行う器官。これが読書前のざっくりとした腸のイメージ。身長の何倍もの長さで、長年の食生活の遺伝により民族ごと、地域ごとにその器官の役割や形状が異なるという話も聞いたことがある。
簡単に説明すると、本書は「食べ物が体を作る」の理由がわかり、何を食べたかによってどう健康が左右されるのかを読み解く一冊だ。その秘密が腸だというから、これは見過ごせない。
本書は248ページ+巻末に出典一覧とさっと読める割には内容は濃い。まず知っておかなくてはならないことは、腸という器官は「小腸」と「大腸」に分かれている。食べ物は胃で消化され、小腸にて更に食品を分解して栄養素を吸収する。それから大腸へと流れ、そこで水分を吸収して排泄の準備をする。まず、これが小腸と大腸の役割。
次のキーポイントだが、腸には「腸内細菌」という人が元来持っている菌がある。今、この分野の研究が進み、平成時代の「善玉菌」「悪玉菌」という考えも徐々に当てはまらなくなった菌の存在もあったりするそうだ。この医療の進歩という部分が一番読み応えがあり、今までわからなかった体内の作用が解明されることで人体の神秘の素晴らしさに触れることができた。腸内細菌、大好きな『はたらく細胞』だとこのあたり。
菌の活動について知っておくべきことは、菌は酸に弱い。良い菌も悪い菌も酸にあたれば死んでしまう。だから胃の中には菌は極小で、腸の中であれば細菌が活動する環境が確保できる。そして菌には酸素を好むものと好まないものがあり、胃に近い小腸では酸素があっても動ける菌が住み、大腸には酸素を嫌う菌が住む。
今、腸における研究の最先端はポストバイオティクスというもので、腸内細菌が腸に入ってきた食物を吸収し、それを材料にして生んだ代謝物のことを言う。腸内細菌が媒体の役割をし、新たに体の中で活躍する別の菌を生成してくれるのだそうだ。この代謝物であるポストバイオティクスはまだまだ研究途上にあるようで、何を吸収するとどんなポストバイオティクスになり、それがどのような役割をするのかがわかってくれば、私たちは何を食べるべきかが鮮明になることだろう。
体に良い菌といえばヨーグルトでおなじみのビフィズス菌だの乳酸菌だのが挙げられるが、これがちゃんと腸の中まで届くことが肝心であり、酸に負けずにちゃんと届いたエサを腸内細菌が取り込んで新たに有益な菌を出してくれれば、より体は健康になるということだ。
例えばどんなに食べても太らない人や、水を飲んだだけでも太ってしまう人がいる。これも腸内細菌が関係しており、ちゃんと菌が活動できる態勢になければ栄養吸収はおろか、どんどんと体に異変をきたしてしまう。腸が必要とするものを食べ、それを腸内細菌が吸収し、新たに有益な菌を生み出すような腸内環境を整えることで、体に良い菌を体内に飼うことができる、と理解した。
腸は脳と直結しているというのは、緊張した時にお腹がが痛くなることからも容易に想像できる。もし、腸が正しく活躍していれば、脳も活発に動くのかもしれない。腸が元気の源ならば、脳は気力の源というところだろうか。
本書では水溶性の食物繊維であるもち麦や大麦、納豆やヨーグルトなどの発酵食品を推奨しているが、いろいろなものをしっかり食べることが大切とのことであった。健康に留意するための楽しい料理生活について考えていたら、油揚げに納豆を入れて食べたくなってきた。私の定番は納豆と一緒に小さなお餅も入れて焼くタイプです。ああ、朝からお腹が空いたなあ。