『闇に咲く おいち不思議がたり』あさのあつこ 著
シリーズ3作目。
この間イギリスの友人と話していたら「今年は完全に乗り遅れた!まだクリスマスツリーも飾ってないし、プレゼントも一つも買ってないし(彼女は毎年家族でクリスマスを祝い、集まると総勢30人くらいになる)、料理の準備もしなくちゃなのにもう12月が来てしまった!」と今年は時間が経つのが早すぎると何度も口にしていた。たしかにコロナ禍が明けてからというもの何かととにかく忙しい。急いで前の生活に戻らなくちゃ!のような雰囲気もあって、それが全方向でストレスをかけてくるので仕事量が増している。人も来るし、出張も増えたし、新しく動き出したことも数多い。加えてプライベートでもやってみたいことがいろいろあるにもかかわらず、時間が取れない人は多いのではないだろうか。
昨日やっと年末帰省するためのチケットを取り、その話を友人にしたところ「料理の準備は早めにやるように」とのアドバイスがあった。イギリスと日本では年末年始に食べる料理のメニューは異なるが、とにかく作る!それに1年に1度この時しか食べないスペシャルな料理を作る!作り置き可能!は共通するようだ。そういえばおせちの準備、してなかったなとちょっと慌てた。そういえば去年買った天然生活の付録がものすごく良かった。
おせちはその地方や家の伝統などでそれぞれ差があるとは思うが、ここに収められているレシピは王道のものが多く、おせち本よりためになった。今年は冬のメニューが掲載されているらしい。
さて、今週末はこの間購入した家中華のなかからいくつか作ることと、大掃除を目標としている。そして紙の本も読んでしまいたいのと、年末に読むべき本をKindle内で選んでおきたい。あ、そうそう。携帯が壊れているので新調しなくては。とやること盛りだくさんだったので、少し頭を柔らかくしようと本書を読んだ。
シリーズ3作目となる本書。毎回書いているがラノベの雰囲気を帯びているので読みやすいのが特徴だ。内容もシンプルで主人公のおいちが予知夢や見えない世界からのメッセージで事件を解決していくというお話。
本作、1冊で一つ歳を取る計算のようで、3作目でおいちは18歳となった。18歳ともなれば江戸時代であればすでに子供の一人や二人いても可笑しくない年齢のようで、おいちはいつも伯母のおうたに早く嫁げと言われている。父で医者の松庵はそれを笑ってみているが、3作目にして「おいちが嫁いだら」と連想するような事件が起きた。
基本的に江戸の医療事情は「医術」「産婆」のざっくり二つで、お産は今の産婦人科の助産婦のように女性が担っていた。医者は、今の内科と外科の全てを扱い、松庵のように蘭学を学んだ医術の認識が深いものであれば精神科なども治療も行っていたようだ。
そして今回の患者はその精神科に関わるものだった。その男性は商家のもので若旦那として家を盛り立てている。立派な身なりに所作も優雅で、何より顔立ちも美しい若者だった。そしてある日悩みを抱えていると松庵を訪ねてきた。
なんでも、己の中に亡くなった姉がいるという。二人は双子であった。しかし双子は縁起が悪いと男の自分は家の中で何不自由なく育ったが、姉は離れでひっそりとまるで存在しないかのような生活をしていたという。そしてある年、江戸に流行り病がおこり、双子も同時に病に侵された。跡取である自分は医者の介抱もあり回復したが、姉は何の手当もほどこされず、亡くなったという。その姉が自分の体に入り込み、時に姿を現すという。
おいちはその様子を確かめるためにその商家へ出向くことにした。そしてその離れに滞在し、しばらく様子を見るために菖蒲長屋から数日の予定で出かけて行った。おいちがいなくなっては父の手伝いをするものがいなくなるため、伯母のおうたの店から人を借り、おいちは何かが引っ掛かる気持ちのまま、先方へと赴いた。
さて、おいちがいない家の中、松庵も伯母のおうたも淋しさを感じて「おいちは元気にやってるだろうか」と何度も口に出してはため息をつく。娘は嫁いでこそ幸せとはいうものの、やはり淋しさは募るもの。
おいちは商家に住み込み、解決の糸口を次々と拾っていく。
あと数冊で読み終えられるので週末一気に読んでしまいたい。