Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#827 縁とはすでに決められたものなのでしょうか~「りかさん」

『りかさん』梨木香歩 著

大人になれば。

 

この間、とある食事の場でのこと。気に入っているという日本酒をお持ちになられた方がいた。とにかく美味しいので是非みんなで一緒に飲もうと豪快に栓を抜いた。私はアルコールが苦手なので横でウーロン茶を飲んでいたのだが、そのお酒のおかげか何とも楽しい会となり、その日本酒のことが忘れられなくなってしまった。その時のメンバーが言うことには、たった数名で一升瓶をあけてしまったにも関わらず次の日もスッキリ起きれたそうだ。そんなに良いお酒ならば家族のために購入しようとネットで検索、早速オーダーした品物が手に届き嬉しい限り。

 

お酒は飲まないけれど、私は甘酒が大好きである。お米から発酵させる物は甘すぎるのでいつも酒粕で作っている。今回、日本酒をオーダーしたついでに酒粕も買ってみたのだが、これがまた本当に上品なお味で何とも気に入った。やっと秋らしい天気となり始めたので、甘酒でぬくぬくしながら読書を楽しみたい。

 

Kindleの中もどんどんと未読の書籍がたまる一方なので早い段階で読んでいきたいのだが、そういう時に限って仕事が忙しい。これからまた2週間ほど留守となるので読んだものはこまめにメモを残さなくては。

 

さて、本書を選んだ理由はなんとなく癒しが欲しくてのことだった。著者の作品を過去から順に読みなおそうとこちらを選ぶ。本書を読む前には絶対にこの一つ前の作品を読んでおきたい。

 

 

前作に登場する人物の過去へとつながる本書は、人形の「りかさん」と蓉子の出会いが描かれている。その頃はまだ「りかさん」は祖母の元にいた。ある日テレビに映ったりかちゃん人形が欲しいとねだった蓉子に、祖母は日本人形の「りかさん」を贈る。同じ人形ではあっても「りかちゃん」と「りかさん」は全く別物だ。ところが蓉子はりかさんと心を通わせ、大人へと成長する過程でりかさんは蓉子に多大なる影響を与えたようだ。

 

その大人になってからの蓉子の穏やかな人柄は前作を読むとよくわかる。ああ、こういうバックグラウンドが蓉子を育んできたのかと考えると、蓉子の不思議な様子なども理解がいく。時に人形というのは魂が宿っていそうで恐ろしく見えることもあるのだが、蓉子にはそれが当たり前のことであるかのように、人形を通して体験している不思議をすんなり受け入れている。

 

「からくりからくさ」も「りかさん」も、見方によっては単なる怖いお話に通ずるものがある。人の縁がどこか運命的なつながりを持っていて、過去とのカルマをも引き継いでいるかのように現世でも互いに吸い寄せられていく。何世代にもわたりどこかでつながることが分かっているかのような、何かが少しずつ密になっていく感覚が見え隠れする。

 

この小説を初めて読んだ時はその後ろにひっそり影となって存在している幽世に飲み込まれてしまいそうになり、少し怖いと思っていた。それが数年経った今、私も少しは成長したのだろうか幽世に対する恐れが全く無くなっている。むしろ隣にあるべきものではあるが、簡単にアクセスできない所のようなイメージだ。そしてそこも平和で会って欲しいし、そこへ行った人々には元気でいて欲しい、幸せでいて欲しいとさえ思う。

 

後半はまた時空がジャンプし、大人になった蓉子へと戻る。前作では大人になった蓉子は祖母の家に移り下宿として3人の女性を受け入れていた。一人は蓉子の知り合いだったアメリカ人のマーガレットで、前作で子供を授かった。本作ではその子が生まれ、1歳になった頃の話が書かれている。

 

この本の良さは大人にならなければわからないかも、と知ったかぶりをしてみたい。