Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#789 うーん。なかなか思い出せないものですね。~「エンジェルエンジェルエンジェル」

『エンジェルエンジェルエンジェル』梨木香歩 著

天使の存在。

先回のヨーロッパ出張とは異なり、南国出張は土日に働いていたが一人で推し進める作業+時間制限がないという気楽さで一先ず平和に過ごすことができた。とはいえ明後日までにはある程度の成果を出さなくてはならないので本日ががんばりどころ。

 

ところで今年に入りあちこち移動していて思うのだが、総じてホテルの宿泊代金がコロナ前より高くなっている気がする。どの会社も役職に準じて宿泊代金のレンジが決まっていると思う。私のような末端の立場だと国内のビジネスホテルでもギリギリ。都市部では規定内で納まるような宿泊先を見つけるのは至難の業だ。海外でも同様で、今宿泊しているところは会社の伝手で予約してもらったのだが、1泊が規定の2倍の料金なのに、それでもこのあたりでは最安価だというから驚きである。

 

さて、この間から梨木香歩さんの書籍を再読している。もう数年来の再読になるものもあれば、ちょっと前にも読んだものもある。とりあえずはタイトルを見て内容が思い出せないものをどんどん読んでいくことにした。時系列で読むほうが好きなので、ざっと出版年月日を調べて古いものから読むことにしているのだが、本書も全く内容が思い出せない一冊だった。タイトルからもなんのヒントも得られず、ひとまず読み始めることに。

 

天使や悪魔の存在になぞらえ人間の善悪を問うような小説は多くある。欧米の小説だとそれが顕著で、贖罪が主題となっている作品を多く読んだ。本書はその和バージョンという印象で、過去と現在を行き来する。

 

高校生のコウコには同居する要介護の祖母がいる。もともとは叔父と共に暮らしていたのだが、叔父の転勤によりコウコの家へやってきた。祖母は一人で生活することはままならず、ほぼ寝たきりの状態が続いている。母の献身的なサポートのおかげか、祖母は次第にコウコの家での生活にも慣れてきた。

 

そもそも、この家は祖母が幼い頃に過ごした家らしく、非常に古い。家にある調度品も何もかもが昔の気配を漂わせている。コウコは家に帰るとすぐに眠くなってしまい、夜中に起きて勉強をする。ある日いつものように夜中に目覚めると、母が祖母をお手洗いに連れて行くところだった。どうせこの時間に自分は起きているからと今後はコウコが夜のケアを手伝うと申し出る。

 

夜、寝静まった時間を育むコウコと祖母。ここでもう一つの存在が役を得る。熱帯魚だ。祖母が来る前、急に熱帯魚が欲しくなったコウコは、両親にねだってはみたが、なかなか了承は得られなかった。それがコウコが祖母の夜の面倒を買って出たことで熱帯魚の件も同時にOKが出る。しかしコウコが夢見たのは壁に備え付けられた立派な水槽であり、どこにでもあるような金魚鉢や水槽を想像していたのではない。しかし家の構造上仕方がないこともあり、水槽で妥協することにした。熱帯魚は管理が必要であることから、水槽にはモーターのついた機械がいくつか施されている。その音が夜の静寂の中で小さく響いていた。

 

祖母とコウコが友達でいられる晩と熱帯魚たちの関係は、著者の他の作品に比べるとものすごくさらっと、あっけなく進んでいく。淡々と物事が流れ、結末へと滑り出す感じ。

 

梨木作品の中では中編にあたる小説。