Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#825 芯の強さ~「選ばれる女におなりなさい」

『選ばれる女におなりなさい デヴィ夫人の婚活論』デヴィ夫人

自分に負けない、人に負けない。

 

普段ほぼテレビを見ることがないが、出張先では割と見る。地域番組は特にお料理など地域のものが多く出てくるのでとても楽しい。またそれぞれの地域の特色なども伝わって来てより愛着が湧いてくるようなところもある。

 

そんなこんなでテレビを見ていたらデヴィ夫人が出て来た。もう80代でいらっしゃるというのにとてもお元気なことに驚く。ところで、デヴィ夫人叶姉妹など社交界で活躍?されている方々はどうやって生計を立てているのだろう?といつも不思議に思っていた。特にその人脈だ。政治、経済、皇室などなど、会いたくてもお会いできないような雲の上の方との華やかなエピソードが聞こえてくる度に驚いてしまう。

 

デヴィ夫人といえば、インドネシアスカルノ大統領夫人であったといううっすらとした情報はあれど、戦後のインドネシアの大統領夫人(それも第一夫人ではなかったはず)というお立場が欧米の階級社会の中でどのように受け入れられていたのだろうと、画面に映る夫人の姿を見ているだけでどんどん疑問が膨らんでいく。

 

そこで、本を購入してみた。恐らくご本人の語った内容を出版社さんが上手にまとめた書籍だと思うのだが、あのデヴィ夫人の口調そのままに書かれているので、あの口調とあの声で脳内再生されてしまう。きっと本書読んだ人はみんなそうなるはず。Wikipediaでも情報は足りると思ったが、終戦直後を生きる娘さんの人生がどのように変わったのかが知りたくて書籍を購入。本書は横に小さく「デヴィ夫人の婚活論」と書かれてあるのを見落としており、本書はデヴィ夫人のファビュラスな恋愛遍歴が中心だった。

 

本書から知り得たことは、デヴィ夫人の幼い頃は戦時中であり、ご両親も働けない体となった事から貧しい生活であったこと。生活苦というものは大きなモチベーションとなることは良く言われるが、彼女の場合は人一倍生きることへの渇望力があり、負けん気も強かった。しかも自分の力でのし上がって行くぞという並々ならぬ決意が伝わって来る。

 

19歳でインドネシアの独立の担い手となったスカルノ大統領に出会い、彼女の人生は大きく変わった。出会いから3年後に結婚するわけだが、一夫多妻制度のインドネシアにおいてデヴィ夫人は4人いた奥様のうちの第3夫人だったそうだ。しかしその後のインドネシアの運命はクーデターにてスカルノ大統領は失職、ついには1967年に他界する。

 

デヴィ夫人スカルノ大統領が共に過ごした時間は非常に短く、ほんの数年のことだ。今で言えば大学時代に恋愛して結婚して子供を産んで、卒業する頃に突然夫が世を去ってしまったようなものだろう。まだ世の中も良く分からないような若さでたった一人で子育てせざるを得ず、実家の支援も受けられない。一瞬にして多くの試練がデヴィ夫人の前に立ちはだかる。加えてデヴィ夫人は戦争経験者であり、愛する家族を失う辛さを重ねて耐えてきた方なのだろう。今、画面に映るデヴィ夫人は努めて明るく演じておられるので、そのような過去があったとは想像し難い。

 

インドネシアの革命後、フランスに移ったデヴィ夫人。そこで見た社交界というものが彼女の人生の基準になっているのかもしれない。20代前半で産んだ一人娘を連れて東洋からやってきた彼女を、フランスの人々はもしかすると難民のような扱いで受け入れたのかもしれない。その慈悲の心があったからこそ階級社会の中でも受け入れられ、居場所を作ることができたのかもしれないと一人考えていた。当時で言えば、まだまだ戦争の痛手も色濃く残っていた頃であろうし、日本に対する嫌悪感も残っていたことだろう。

 

異文化の中で娘を育てなければならず、収入を得るためにも必死だったはずで、実際に会社を興して仕事をしていた時期もあったようだ。ただ、今はデヴィ夫人の努力の部分にスポットライトが当たることは少なく、華美な日々に注目されることが多い。だからこそ私もどのようにお金を稼いできたのかが非常に気になるところであった。

 

本書を読む限り、自分を活かせる場所だと決めた社交界で認めてもらえる為の努力は並みならぬものだったことがわかる。ヨーロッパの上流社会に出入りするとなると、物を見る目も鍛えられ本物を見極めることができるようになり、どんどんと洗練されていったに違いない。芸術、学問、人としての生き方などなど、学ぶことも多かったに違いない。若かったからこそ、デヴィ夫人はスポンジの如く多くをものすごい速さで吸収していったに違いない。その結果、人との縁が生まれ、多くのことを学び、機会をものにしていったのだろう。

 

恋愛については王家の方や経済界の大物との思い出などなど、とにかくファビュラスな日々について綴られている。とはいえ、彼女は結局その後再婚はしていない。愛人だったり恋人だったりはいたのだろうが、なぜか破局している。もしかすると、フランスの小説のように自由奔放に恋愛しつつも、実はものすごく純愛というようなピュアな世界の住人なのかなとも思ったり。

 

決めたらやる、そして誰にも負けないという意思の強さに脱帽。あともう1冊も買ってあるので折を見て読んでみたい。