火事と喧嘩は江戸の華
もう一気に読み進めてしまおうと今読んでいるシリーズものを一気読み中。
この南町奉行である根岸肥前守が主人公となっている本作品はいくつかのシリーズに分かれており、こちらが最後のシリーズとなる。全7巻でこちらが4冊目。
今回のテーマは江戸を度々襲った火事である。時代小説を読んでいると火事の話がいくつもでてくる。例え江戸が河川に恵まれており、立ち上がった炎を消すにあたって他の地域よりは容易に火を消すことができたとは言え、それでも木造の江戸の建物を襲う炎の速さにはなかなか勝てなかったことだろう。
火の手を広げない工夫として、江戸時代は火が広がる方向にある家々を先に潰してしまうという手段を取っていたそうだ。よって家の中にはそう多くの火災道具も無く、すぐに逃げることができる上に、すぐに壊すことのできる状態が維持されていたに違いない。とにかく火を出すことは重罪でもあったので、火事を起こさないことは江戸の平和の要であったことだろう。
江戸時代にはいくつかの大火の記録があり、大阪などでも多くの人が犠牲になったとある。小説の中でも頻繁に登場するが、本書で出てくるお話は南町奉行所によって大きな事件となる前に未然に火事を止めようというお話だ。
江戸の火事が多いということで、南町および北町奉行がなぜかお城の会議で叱責された。放火は注意喚起することで止めることはできるかもしれないし、町人も火の取り扱い方に気を配ることで火事を押さえられることはできるだろう。ひとまず岡っ引や番屋の者を総動員して火の用心に当たらせることにした。そして根岸はお抱えのいつものメンバーに火事の調査を依頼する。
そこへ根岸肥前守の親友である五郎蔵が奉行所に遊びに来た。五郎蔵は江戸の水運を掌握しているという強者だ。得意先からとある趣向に招待されたのだが、共の者を2名まで連れて行くことができるということで、早速奉行所にやってきた。というのも、その趣向が花火だったことや、会場が調査先の近くにあったことから根岸の部下を連れて行ってみようと考えたようだ。そこで夜回り同心の土久呂とその岡っ引きの源次が選ばれ、五郎蔵の共として同席することとなった。
会場は商家の建物で、すでに数多くの人々が集まっている。これほどの人を集めた趣向というのが、若い娘と線香花火を楽しめるというおじさんのみが嬉しい企画である。女性に不自由していない五郎蔵も、調べで来ている土久呂も源次も全く娘らに関心がない。すると小さな異変が起きた。敷地内に流れる小川に何やら異様なものが流れ着いた。何か大きな丸い物体が流れているようなのだが、よくよくみると顔の形をしているようにも見える。火はすぐに消されたが、何かの事件の関係を感じた土久呂は、早速深く調査に進む。
今回の調査は人の念があちこちに散っており、その一つ一つを丁寧に調査する南町奉行所のメンバーがとても頼もしい。
さて、このタイトルにある火消し婆だが、砂かけ婆の火バージョンのようなもので、火事があるとその日をさっと消していく妖らしい。
あと数冊、早く読んでしまおう。