Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#815 自由を求めて生きていきたい~「古本食堂」

『古本食堂』原田ひ香 著

兄の家。

夏休みに入る日、時間が余って空港内の書店に入った。本書はそこで見つけた一冊なのだが、本自体はKindleで購入。するするとあっという間に読み終えた。

 

この物語の主人公は神保町にある古本屋である。元は滋郎がたった一人で始めた店で、一つ一つ作り上げていって今の形となった。滋郎は東大の国文学科に入学するも、70年代の学生運動を経て、「さて未来とは」と行き詰まる。これからの自分の生き方を選ぶため、学校は退学。そして海外へと旅にでた。戻ってからこの古本屋を開き、おかげで学生時代の国文学科のつながりから古典にかかわる書物の納品などまでを担っていた。

 

それから約30年。その滋郎も年を取り、ある日病に倒れ、あっという間に世を去った。滋郎は多くの人から慕われていた。葬儀には多くの人が訪れ、家族も涙にくれる日々だった。滋郎の生存している家族といえば、実妹の珊瑚と、長兄の子供とその孫である。

 

滋郎の古本屋は3階建てのビルの1階で、2階と3階を文学関係の出版社が入っている。そして驚いたことに、そのビルは滋郎の持ち物となっていた。ほかにも滋郎は日々の質素な暮らしからは全くわからなかったが株なども購入しており、残された財産は想像以上であった。

 

そして、その遺産の多くは妹の珊瑚と甥のものとなった。古本屋を託された珊瑚は、滋郎同様結婚することもなく、たった一人で両親を介護した。そのことを滋郎はとても感謝していたようだ。両親と珊瑚は北海道の帯広というところに住んでいた。しかし珊瑚は古本屋の状況を確かめるため、ひとまず東京で暮らすことにする。

 

古本屋は今、妹の手で滋郎の選んだ本を売っている。滋郎が人気者であったせいもあり、日にぽつぽつと客は来る。それを滋郎とは異なった形で接する珊瑚。そして珊瑚は決して一人ではなかった。長兄の孫、美希喜は近くの女子大の大学院で国文学の勉強をしている。滋郎がいなくなった古本屋を二人が継いでいくというもの。

 

さて、著者の作品と言えばこちらがものすごく頭に残っている。

 

本書の中でもFIREの話が出てきて、急に気持ちが「節約」に向かっている。たまには実利的な本でも読もうかしら。