Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#812 夜の帳は降りたまま~「眠れない凶四郎 4」

『眠れない凶四郎 4』風野真知雄 著

耳袋シリーズ。

 

有休、会社によって規定は様々かと思うが、弊社の場合は2年目まで持ち越すことができ、年間最大40日まで規定上では保有可能だ。翌年に持ち越せる有休残は20日なので、可能な限り1年間で20日は休んだ方がお得だ。なぜなら、使い切れなかった有休は自然消滅となり換金されることもないから。

 

大体のメンバーが夏休みや年末年始の他、飛び石連休の間に有休を使ったり、週末に充てて長めのお休みにしたりする。そしてここに「代休」というものも存在する。土日祝日に出勤した場合、代休を取ることが可能だ。しかし、社内ではこれはサービス残業とみなされることが殆どで、特にアテンドなどで空港とホテル間の送迎やお食事にお付き合いするなどは拘束時間も中途半端で、家に帰っても数時間の休息しか取れないにも関わらず、絶対に代休とはカウントされない。でもそれでは体が疲れてしまうので、私は出張で休みの日に動いた場合のみ、代休申請をしている。

 

ということで、この度有休を消化したれと土日を含め11日の休みを取ってみたわけだが、休み過ぎて帰って仕事したくないわーな気分。しかしそうも言っていられないので、本書を読んだ。できる人の行動を見て、やる気を出そうという作戦である。

 

凶四郎、3巻目の終わりにて妻亜久里を斬った犯人を捕らえた。そして事件は驚きの展開で解決となる。しかし未だ眠れずにいる。南町奉行根岸肥前守はそんな凶四郎を夜回りから解放したいと考えていた。根岸曰く、夜の闇に接しているとそのうちその闇にとらわれてしまうからとのこと。心が晴れぬままに、夜に渦巻く人の不安や悪に染まるということだろうか。

 

しかし眠れない凶四郎は自らが見つけた岡っ引きの源次とともにもう少し夜回りを続けることにした。最近、源次は岡っ引きとして町でも認められ始めている。親分などと声を掛けられ、すっかり頼りとなる存在に成長した。

 

そんな源次にある相談があった。昔一緒にやんちゃをした友からの話だ。とある店の主が怪しいという。最初は小さな情報に事件の糸口がある場合もある。普段凶四郎の仕事を見ている源次は、この友の話もしっかりと凶四郎へと伝達する。

 

同心の凶四郎は闇にとらわれないために、川柳教室に通っている。思ったよりも楽しくなってきた頃、その理由は川柳のみではなく師匠の存在が大きいことにも気が付く。少しずつ亜久里不在の苦しみから解き放たれ、眠れる夜が来るのかと思いきやそう簡単に夜は凶四郎を解き放ちはしなかった。

 

源次に聞いた怪しい店を気に掛けるようになってから、まず、凶四郎は狙われた。というより、凶四郎と間違えられて襲われた者が出た。これは確実に凶四郎の存在を不快に思うものがいるということである。もちろん根岸にも報告し、影に何が潜んでいるのか探るつもりである旨も伝えている。ところが、何等かの不穏な気配は意外なところにつながっていた。

 

根岸は派閥に与していない。どこにも所属せず、時の権力者であった徳川にも田沼にも属していない。しかし、政治の世界から身を引き、今は楽翁と呼ばれている松平定信は身分差がありながらも気軽に根岸を訪ねてくるような仲だ。楽翁の博識さに根岸は助けられているところもある。

 

今回の凶四郎の追う先は赤月屋という油や蝋燭を売る店だ。まだ若い当主は先代の急な他界に伴い、親戚筋から呼び寄せられた身内だという。商いに長けており、あっという間に身代を何倍にも大きくしたとの噂だ。その当主、実は裏の仕事があるらしい。それは一級品の財宝を扱う売買で、名品揃いとのことだ。

 

骨董は身分の高い者に好まれる。その特級の美を愛でる者の一人が楽翁であり、赤月屋の顧客でもあった。ここから凶四郎の捜査へ根岸が大きく関与する。凶四郎の鋭利な推理を楽しみにしていたが、話が大事になりすぎて奉行の活躍が大きくなってきた。

 

純粋な捕り物シリーズ、そして夜という題材が新鮮に感じられ早く続きが読みたくなる。