Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#802 思い出に残る先生~「ここは今から倫理です。」

『ここは今から倫理です。』雨瀬シオリ 著

倫理の先生。

 

この頃ちょっと空き時間でAmazonに行ってはあれこれ書籍を購入してしまった。いつもは評や内容をチェックしてから購入するのだが、気になっていたマンガ類に関してまずは1巻を購入し、気に入ったら続編を購入するようにしている。

 

本作品はタイトルと表紙の絵の微妙な暗さに惹かれて購入。表紙の男性は高校の倫理教師である高柳先生だ。倫理の授業を通し、生徒たちの心にちょっとした変化が生まれていくというお話。

 

 

高柳先生曰く、倫理は知っておいたほうがいいと言う。ストレートに将来役に立つような科目ではないけれど、でも心の中で命についての葛藤が生じてしまった時、その時こそ倫理は活躍してくれる。

 

高校生はまだまだ親の保護下にあり、親の影響を多大に受ける。大人でもあり子供でもある。大学生くらいになり、やっと己を作り始め、社会人になって大人としての自覚を持ち始める。多感な高校時代、高柳先生は独特のやり方で生徒に接していた。

 

高柳先生は愛想がない。だから少し冷たく見えてしまうのだが、実は生徒に対する責任感を強く持って日々を送っているようだ。学校の先生はたくさんのクライアント(生徒)と接する必要があり、毎日プレゼン(授業)をし、年に数回オーナー(保護者)との会議もある。社内の会議もかなり多い。加えて顧客のイベント(部活)にも参加し、土日だって出勤しなくてはならない。ものすごく負担の多い職場だろう。だからトラブルが発生すれば、その対応から逃げたくなる時もあるはずだ。目をつぶってしまうこともあるだろう。

 

高柳先生は己の考えがしっかりあり、生徒を導く珠玉の知恵を持っている。それが倫理の授業を通じて、時に子供たちの心を掴む。

 

本書の最後に著者がこの作品を描いた理由について紹介されていた。親族の方が自ら命を落とし、その遺品の中に倫理のノートがあったという。びっしりと線が引かれ、命について向き合い、助けを得ようとしていたことが著者の胸に届いたようだ。そのせいか、高柳先生を通して語られる言葉は生き方にかかわるものが多い。

 

私の通った高校では倫理の授業はなかったけれど、その代わり聖書の勉強をする時間があった。若い時に倫理や聖書など、西洋の哲学というか命についての考え方を学べたことは今思うとプラスになっているような気がする。今大人になって思い出す小中高の先生といえば、私は高校時代に聖書を教えて下さった校長先生だ。そうか、あの深さが人の大きさを感じさせてくれたのかも。

 

ちょっと勉強したような気分になれる作品。