#797 謎かけが一まわり大きくなってきました~「妖談へらへら月」
『妖談へらへら月』風野真知雄 著
笑う月。
この頃読んでいるシリーズもの。
妖談シリーズも残すところあと数冊。今回もまたタイトルから推測もできないようなお話であった。そして、前作の内容も引き継いでいるので1冊読み切りの作品ではない。
この妖談シリーズはすべてなんとも言えないタイトルがつけられているが、本作はタイトルに怖さがにじみ出ていない分、何のことやら全く想像がつかない。ただ月にはなんとも妖艶なところもあるので、きっとなんらかの妖がらみなのであろう。
それにしても「へらへら」という単語が気になるところだ。へらへらは「笑う」につながる単語のイメージが強い。それも決して好印象な笑い方ではない。どこか心が入っておらず、ただ相手に合わせるかのようにへつらう感じ。果たして月はそんな笑い方をするだろうか。どちらかというと静かに微笑んでいるようなイメージのある月がへらへらと笑うなんていったい何が起きているのだろう。
キーとなるのは突然いなくなる、まるで神隠しのように消えていく江戸の市民だ。まじめに暮らしていた者がある日突然いなくなる。加えて身分に関係なく消えていくことから、奉行所としては頭の痛い事件であった。
南町奉行所の奉行、根岸肥前守は昨今突然いなくなる人々についての情報を集めていた。するといなくなった人々の周囲から「へらへら」「月」という単語が出てきた。いったいこれは何だろう。しかもへらへら月に向かうという。
情報を集めれば集めるほど、何が起きているのかがわからない。人が月に向かうとは何事か。そしてその月はへらへらしている。大きな事件へとなる前に、根岸は部下たちへいったいどんな意味があるのかを確かめさせた。岡っ引たちが調べたことによると、いなくなる人々は毎月同じ日に突然いなくなる。そして空に赤い流れ星が見えることもあったという。
本作品からちょっぴり世界観が壮大になってきた。あと数冊、どんな話になっていくのかが楽しみ。