Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#791 はしを渡るべからず~「妖怪しにん橋」

『妖談しにん橋』風野真知雄 著

不思議な橋。

 

東南アジアの滞在中にのど風邪をひいてしまい、帰国後も咳止めの薬が欠かせない。熱も無く咳だけだが、まだまだコロナの疑いがあることから検査してみるもやっぱり風邪。過度なエアコンには注意です。

 

自分が外に出るよりも海外からやってくる人たちの対応に追われ、どんどん体が疲弊していく。早めにどこかで休みたい。

 

さて、記録残し漏れをどんどん書いていこう。ずっと読んでいるこのシリーズの続編。


耳袋シリーズも「妖談」となってからタイトルのインパクトが大きい。本作品は平仮名でやんわりとした表現にはなっているが、書いていることが怖すぎる。そう、漢字をあてるとこの橋には死人と四人の二つの意味を持っていた。

 

江戸の頃は夜の灯りは蝋燭の火くらいなもので、新月の夜などはほぼ暗闇であったことだろう。しかし満月の夜には月の光で人の姿にも影ができる。ある頃から突然、大川にかかる新しい橋に「しにん橋」という名前が付いた。なんでも満月の夜に四人で橋を渡ると一人の影が忽然と消えるという。その影が消えてしまった主は、まもなく命を落とすらしい。

 

もともとこのような怪談めいた話が好きな南町奉行所根岸肥前守はもちろん部下に調査をさせた。なぜ橋から影が消えるのか、いつ消えるのか、どのような事件が起きたのか。調べれば調べるほど、謎の膨らむ事件であった。

 

川や月はなんとなく寂しさを連想させる。これが海と太陽だったら元気いっぱいなイメージだけれど、川や月にはなぜか控えめな印象が伴う。そこに影まで加わると儚さまでが伴って、一体どんな話が来るのかと読者は否応なしにストーリーにのめり込むことになる。

 

橋を渡った4人組で影の消えた者が命を落としたとの噂が町方の耳へも届いてきた。根岸の部下に同心の椀田という者がいる。非常にまじめでまさに同心!という人柄だ。その椀田、この前まで謹慎の身にあった。同心は足軽程度の身分で武士としての身分は非常に低い。ある日椀田は町中での喧嘩を止めに入った。旗本の息子らが乱暴を働いていたのだが、町の者らは相手が武士であることから手出しができない。それを椀田が止めに入り、もともとの腕の強さもあって武士側を制することとなった。それが気に入らなかった旗本の息子らは奉行所へ「武士への暴力、まかりならん」と申し出た。一応職についてはいなくとも、旗本は旗本。椀田は謹慎を命じられるはめとなった。

 

消えた人物の調査をしていた奉行所だが、その消えた人物というのが椀田に痛めつけられた旗本の息子たちのうちの一人だった。だからといって、調査の手を抜く根岸ではない。なぜその若者が命を落としたのかを調べ始める。

 

江戸時代、橋の両端には番屋があった。橋を渡るには有料なものも少なくなく、このしにん橋も有料であったことから番屋は橋を渡った人物を記憶していたはずだ。ここから南町奉行所の推理が真実へと近づいていく。

 

妖談シリーズになってから栗田と坂巻の姿が見えなくなったが、今回ちらっと名前が見えて嬉しい限り。