Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#794 捕り物だけど純愛~『妖談さかさ仏』

『妖怪さかさ仏』風野真知雄 著

耳袋シリーズ。

 

この頃読んでいるシリーズものの続き。

今回は仏が逆さになっているという。

 

ところで、この間「国によって怪談にも差がある」という話になった。その人の育って来た文化背景によってどうやら怖いと感じるものが異なるらしい。それは大きく宗教に由来するところがあると思うが、例えば暗い=何か怖いことが起きそう、という感覚は日本人ならば共感頂けると思うが、一方で「その感覚、全くわからん」という国の方もいる。あと私は西洋のケルト十字の墓石など非常に美しいと思うのだが、外国育ちのクリスチャンはそれが怖いと言っていた。あとは吸血鬼、狼男なんかを怪談として考えたことは一度もないが、「あれは怪談だよ!」と言う人にもあったことがある。

 

今ではホラー映画の影響で、長い髪で青白い顔、超越した動き方などがザ・日本のお化け達というイメージがあるが、昔のお化けといえば柳の下で白い着物に長い髪で手を前に垂らして「うらめしや」が定番だった。私が怖いと感じるのは日本人形で、動いたとか髪が伸びたとか喋ったなんていう話がとても苦手です。

 

このシリーズは妖談なので、妖(あやかし)が出てくるお話集ということになるが、その妖談好きが根岸肥前守という南町のお奉行様なので、どうしても捕り物が絡んでくる。単純な捕り物だとお話の軸が多くても二重三重くらいだろうけれど、これは過去の話や今起きている不思議事件がいくつも重なるので読みごたえがあった。

 

さて、タイトルだが仏というのは仏像を指しているのみではなく、命を落とした者を指す場合がある。寺の近くの木に逆さに吊るされた女が発見された。奉行所の面々にはなぜ逆さに吊るされているのかわからない。しかも寺社の軒先のことである。報告を受けた根岸は、この「さかさ」に何か意味があると考えた。

 

調べものというのは、一つを調べている間に別の疑問が出てくる。浮かび上がった疑問を解こうとすることで、元々の疑念が晴れることもあれば、逆にどんどん謎が増えてきて最初の疑問からどんどんと遠ざかることもある。今、南町奉行所は大きな迷路の中に放りこまれ、それぞれが手探りで出口を探しているような状態だ。

 

さかさの謎。追っていくうちに見えてきたことは、さかさ仏には順序を表す場合があるということだ。順序とは、命を落とす順番のこと。すなわち、若い者が先に逝くということで、子が親より先に鬼籍に入ることを意味する。ここから一つ道が開けた。

 

ところで、妖談シリーズの前の捕り物シリーズの最後のほうで、同心の椀田が深川芸者の小力というトップクラスの女性を妻帯したとあった。本シリーズでは、同心でオシャレではなく、お金もなく、柔道が滅法強いまっすぐな男性の淡い恋模様が描かれており、小力との出会いからが詳細に書かれていて面白い。ちょっと「俺物語!!」に重なるイメージなのもまたGood!