Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#459 猫好き、必読! ~ 「猫の傀儡」

『猫の傀儡』西條奈加 著

操られたいし!!!

 

どうしたものか。募りつつある不満の波がなかなか引いていかない。いつもは会社のことなんて1ミリも頭に浮かばないはずだった。家に帰って本を読みだせば会社の存在すら忘れる体質だったはずなのに、この頃は隙間隙間に不満の種が顔を出してくる。非常にストレスフルな日々が続いているのでここは好きなタイプの本を読もうと本書を読み始めた。猫に癒されたい感からの選択です。

 

さて、犬派か猫派かという話題は会話に困った時や、場を和らげたい時なんかにもよくでてくるけれど、これからペットと暮らしたいという具体的な計画を立てている時にも語られる。この度同僚が猫を迎え入れ、周りで急にペット熱が高まった。私は犬も猫も両方好きなので答えを絞れずに毎度困ってしまうのだが、建物の中での生活に限られるのならば完全に猫だ。都内で犬と暮らすには広い場所や散歩などなど、犬メインの生活を送れる自信が無い。経済力って大切ですね(涙)

 

本書の主人公であるミスジは自由を満喫する一匹猫の野良出身で、通いでいろいろな長屋に顔を出すけど、基本自立した立派な猫だ。猫町の中では大変な名誉職に就いている。それは「傀儡師」という役割で、代々しっかりと修行を積み、神官や親方から任命されるそれはそれは重要な仕事だ。

 

傀儡、私はタイトルを見たときに「かいらい」と読んでしまったのだが「くぐつ」と読むらしい。傀儡とはあやつり人形のことで、でくのこと。なんとも疑問を引き寄せるタイトルにどんな話だろうという期待感が高まる。

 

ミスジはものすごくかっこいい。額に3本の線がある。三筋だからミスジだ。江戸っ子気質そのままで弱気を助け、悪を倒す。ただ、猫だから自分で悪を倒すわけにはいかないのが問題で、猫町では代々傀儡を使って困りごとを解決していたらしい。この度ミスジは兄弟子の順松が突然行方知れずになったことから次代として傀儡師を仰せつかった。一方の傀儡はこれも自分で決めることではなく、三役のお偉方がしっかりと見極めたうえで決めてくれる。親方たちが挙げた名前は戯作者を語るニート風な阿次郎だった。阿次郎は大きな商家の次男坊だが、家を飛び出して長屋で気ままに暮らしている。暇を持て余していることも傀儡になる条件の一つらしい。

 

ミスジが傀儡師を志したのは子供の頃に順松に助けられたことがきっかけだった。かっこいい兄貴の姿に惚れたミスジ猫町へ移り住み修行を重ねた。コミュ力も高いし、何と言っても機転が利く。体も軽くてどこへでも飛び乗るし、語学(人間語とか鳥語とか)能力もものすごく高くて交渉上手。かなりできる猫なのだ。現場を見抜く力も鋭利で、テンポよく進むストーリーにどんどん読み手も楽しくなりすぎてヒートアップしてくる。

 

傀儡に選ばれるなんて猫好きには喜び以外の何物でもない。チュール準備して待ち構えていたとしても、あちらが選んで下さらなければならないわけだから、阿次郎が羨ましくてたまらない。しかし、望みはある。傀儡側は選ばれたことに気が付かないのだから、毎日見かけるあの猫たちの中に傀儡師がいるやもしれない。

 

すでに猫と共に暮らしている人ならば絶対楽しめるに違いない一冊だ。日頃街で見かける猫への思いが100%変わるような内容だった。ああ、こんな傀儡ならなってみたいぞ。