Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#790 没頭できる人生の道を見つけたい~「仏果を得ず」

『仏果を得ず』三浦しをん 著

文楽

 

いつも決まった航空会社を利用しているわけではなく、都度料金と利便性を見て購入している。今回かなり久々にANAを利用した。コロナ前とコロナ後ではいろいろなサービスが変わってしまったのですね。ものすごく好きだった歌舞伎の機内の安全ビデオは続投して欲しかった!

 



そしてもう一つ、国際線の座席指定が有料になっていたことを知り、ちょっと残念。今はクレジットカード付帯のサービスでちょっと良さげな会員レベルを維持しているが、国際線の座席指定ができるのは上級会員だけらしい。日本を出る時、すっかり座席指定の存在を忘れておりちょっと不便だったので、これからは有料でも指定することにしよう。というか、他の航空会社を選択する可能性もあるかもしれないなー。

 

さて、本日の一冊は歌舞伎とは異なる文楽の世界だ。日本を代表する芸能には演舞や演劇と共に音楽がある。文楽はそれらが微妙に合体しているところに加えて、演ずるものが人形であるという特徴がある。人形浄瑠璃に三味線の伴奏が付き、独特の節で物語が語られていく。

 

本書はその文楽の世界に身を置く青年が主人公である。健は文楽における語り部である太夫である。本書にて知ったのだが、文楽には養成所があるらしい。こういった伝統芸能世襲が殆どと思っていたのだが、決してそうではないということを知った。

 

健は修学旅行で文楽を見て感銘を受けたことから、高校卒業後の進路に文楽の養成所へ入ることを望んだ。太夫はただ物語を語るだけではない。それぞれの場面に合わせて感情の全てを乗せる。その気迫たるや眠っていた健をも起こすほどで、それは石をぶつけられたような感覚だったらしい。

 

今は銀太夫の下で学ぶ健は、師匠の拠点がある大阪で暮らすようになり10年が過ぎた。言葉も大阪弁を身に付け、心身ともに文楽にどっぷり浸かった毎日である。お金もないので遊びにも行かず、義太夫のことしか考えられない。

 

そして銀太夫を始め、文楽の世界に居る人たちのキャラも特殊だ。人間国宝級でありながらもいたずらっ子のようにチャーミングな師匠、気難しい先輩たちとともに芸に切磋琢磨するお話。

 

読んでいるとここまで没頭できるなにかを生涯の労として選んだ健が羨ましくなった。芸能の世界には定年もないし、いくらでも目指す上がある。その作品自体をより高みに昇華させるにはそれぞれの力量を磨くことが重要である。一人の失敗が劇を崩す。

 

健のように真剣に、全てをかけて仕事をしているかと聞かれると、100%否な私は人生これでよいものかと考えてしまった。何か「これ」というものをこの生の間で極めるべきなのではないだろうか。ああ、今からでも遅くはない。私のライフワークは何だろう。

 

舟を編む」もそうであったが、著者の作品を読んだ後はものすごくモチベがあがる。よし、もう一つ己を高めてみようかな。