Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#225 能の世界へ近付けてしまう美しい少女漫画

 『花よりも花の如く1~19』成田美名子 著

能を舞台とした美しい世界。

 

現在19巻まで、3月には20巻が出るらしい。ちらっと見た絵があまりにもきれいなことと、評価の高さに惹かれて購入した。本当にキャンペーン、ありがたいです。

 

能、狂言、歌舞伎などなど日本の伝統芸能は数多いが、能はお面を被るくらいの知識しかなかった。たまに小説などで能の話が出てきてはネットで調べて「なるほど」と知識を入れてから続きを読んだりしていたのだけれど、ストーリーはわかってもどのように演じられるのかなど想像したことが無かった。

 

もし能についてマンガで学べたらどれだけ楽しく近づけるだろうかとかんがえていたのだけれど、まさかそれが成田美名子さんの作品で読めるだなんて!絶対に美しいに違いないと早速出てるものを全巻買った。

 

そして、その成田さんフィルターを通した能の舞台がこれ。舞台一つでも美しいのだけれど、この細やかさがまたすごい!

 

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木の香りまで届いてきそうなほどの舞台の絵に圧倒されつつ、ストーリーもかなりの研究を重ねた上で丁寧に書かれているので内容がすーっと入ってくる。きっと物語の一部に過ぎないとは思うけれど、まったく能の世界を知らなかった人でももっと知りたい!と思えるに違いない。

 

能はお面を付けているので表情が変わらないように見えるけれど、作品の中での演者の「感情」がしっかりと読者に伝わるすごさ。泣けるし笑えるし、深みがある。

 

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能を演じるのは憲人3人兄弟の長男で、母親の実家は能の家元で師匠は祖父である。弟の西門は父方の実家である青森の神社へ養子となり、幼いころに家を出ていた。西門は弓の使い手で前作『Natural』でも大活躍。末っ子は妹で弓にも能にも造詣がある。

 

憲人の能に向き合う姿の中でも、能の舞台となったところへ出かけていくちょっとした旅行の場面もとても勉強になる。寺や神社の話も「ああ、そういう歴史があったのか!」と新たに学べることが多い。

 

この作品は少女漫画というよりは登場人物の年齢も少し高めなので大人向けの作品かと思う。ただ恋愛がテーマとなる瞬間はやっぱり少女漫画だなあと思い出せるのだけれど、その恋愛もさらっとうっすら。毎回の表紙といい、能のシーンといい、ため息が出るほど美しい。