Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#200 日本の児童文学にも面白いものがたくさんあるよ!

 『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』廣嶋玲子 著

必要な人の前に突然現れる駄菓子屋。えんじ色に古銭柄の着物の店主紅子さんは不思議な人。

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

  • 作者:廣嶋 玲子
  • 発売日: 2013/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 定期的にAmazonを徘徊しているのだけれど、今またセールをやっているらしい。

 

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セールは本当にありがたい。ディスカウントの時には今まで読んだことのない作者の作品を、ポイント還元の時には気に入った作者の他の作品を買うようにしている。今回も新しい出会いがあればと思う。

そういえばこの間のセールの時に買った本にまだ未読なものがあったはずとチェックしてみたら、まだまだたっぷり残っていた。ということで、少しずつ読み始めることに。まずは軽く児童文学から読み進めることにする。 この本、アマゾンの児童文学ではベストセラーとなっている。期待値がおのずと高まるが、ベストセラーとなるだけの面白さがあった。

 

セール本のリストを見ていて思ったのだが、それにしても日本にはたくさんの書籍がある。これも日本人の識字率の高さにあるんだろうなと思う。江戸時代ですでに世界一と言われるほどだったそうなので、伝承もずいぶん書き残されている。昔から本を読む楽しみ、書く楽しみを知っている文化背景のおかげで、私たちは今も楽しい読書生活を送ることができるのかと考えると何とありがたいことかと思う。 

 

昔話の伝承があったからこそ、日本の児童文学は独特さを持ちながら育ってきたのだと思う。ちゃんと子供に伝えたいメッセージも入っているし、絵にしても美しいものも多い。長さも小さな子供が飽きない程度に収められ、起承転結ちゃんとオチもある。絵本なんて最たるもので今やずいぶん翻訳され輸出されてもいる。

 

最近「日本にいても息苦しい」などなど隣の庭は青しがごとく、日本を蔑む人がいるらしい。私は外で暮らしたことがあるせいか日本の悪いところも良いところも見えているつもりだ。その経験から日本は大変住みやすい国だと思っている。そもそも、だ。お隣の国の人がこぞってやってきては帰らないのはなぜ?母国より住みやすいからでは?日本を悪く言う人を見るたびに、文化の豊かさにもっと目を向けて欲しいと思ってしまう。この豊かさを享受できるのは日本人として生まれ育ったからであり、それを鑑賞できるのは決して当たり前のことではない。まあ、きっと外に出て実際に見て聞いて経験しなくてはわからないことなのだろうし、そういう人はきっと日本を出てからもその滞在国を悪く言うに違いない。そういう人にこそ児童文学をおすすめしたい。

 
話は戻るがこの本だ。視点がかなり面白かった。主人公は銭天堂という駄菓子屋を営む紅子さんという謎の女性だ。いつもえんじ色に古銭柄の着物を着ており、体がかなり大きい。しかも銭天堂は今何かを必要としている人の前にしか現れない。しかも銭天堂なんてお店を知っている人はほぼいないのだから、目の前に突如として現れた駄菓子屋に「あれ、こんなところにお店なんてあったかな?」と思ってしまう。そしてその佇まいに引き寄せられてしまうのだ。

 

紅子さんは毎度お客さんに欲しいものを尋ねるのだが、駄菓子屋なのにみんな駄菓子を所望せず「泳げるようになりたい」とか「有名になりたい」と食べ物とは遠い話をするのが面白い。そして駄菓子は時に5円、10円、50円、100円、500円と価格が異なるのだが、たいていコイン1枚の価格になっている。そしてお金を受け取る時、紅子さんは「本日のお宝、昭和・平成・令和〇年の〇円玉でござんす」と言う。小銭がお宝で、しかも製造年が指定されているというのも面白い。

 

紅子さんが売っている駄菓子はたしかにおいしい。そして食べると効能が現れるのだがお客さんはまさか駄菓子にそんな作用があるとは思うはずがない。でも紅子さんからもらった駄菓子を食べると夢が良くも悪くも叶ってしまうのだ。ただ、お菓子の説明書はちゃんと読まなくてはならない。そこに大切な注意事項があるからだ。読まずに食べるとトラブルになってしまうこともある。

 

お菓子を食べることで冒険に導かれる児童文学で対象年齢は小学校中学年以上くらいだと思う。ちょっと面白いのは、冒険する=お菓子を食べる人がいつもの児童文学ならば同じくらいの年の子供のことであるはずが多いと思うが、この本には大人も登場することだ。大人のほうが子供より強欲というか、ピュアではない。だからこそ子供への教育になるのかもしれないけれど、その分ちょっぴりリアル感がある。

 

いくつも楽しそうなお菓子がありそうだし、紅子さんと銭天堂にも秘密がありそうだ。現在14巻まで出ているようなので、子供にも喜ばれる話なのだろう。現実の世界が舞台ではあるが、魔法がお菓子に溶け込んでいることと銭天堂の存在がファンタジーの世界へと誘ってくれる。章の終わりには購入者の名前、年齢、コインの製造年、コインの種類、購入者の性別が一行にまとめられている。ここでまたふと現実が戻ってくるような感じになるのがまたすごい。日本の児童文学、すごいのですよ。もし周りにこの世代の子供がいたら、絶対おススメしたい作品。