Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#774 日本の夏、世界の夏~「白金南蛮娘殺人事件」

『白金南蛮娘殺人事件』風野真知雄 著

耳袋秘帖殺人シリーズ最終巻。

11日は山の日、今日もお盆真っただ中でお休みを満喫しておられる方が多いことだろう。連日台風のニュースもあり、せっかくのお休みなので子供たちのためにも晴天が続いて欲しいところだ。今年は台風の影響で急遽スケジュールを変更した方も多いとのことだが、是非楽しい夏休みを過ごして頂きたい。

 

アジアの国の方で毎年この時期にやってくるとある会社の役員さんがいらっしゃる。アジアの国々は祝日のタイミングが日本と重なるところがあるので、こちらが休みのタイミングはあちらの国でもお休みのことが多い。今年もその方が「山の日」にやって来た。国際線の到着ロビーはそれほどの混雑もなく、都内への道も混んではいなかった。そのせいかお盆の混雑について説明してもなかなか通じない。この作業を毎年繰り返しているのだが、とにかく混雑のあるエリアへ行きたがる。例えばお盆で休みだと何度も言っているのに、風光明媚な場所にある企業を訪問するという体で楽しそうな地域へ行きたがる。新幹線も席がない、車も渋滞が激しいということを滾々と説明しつつ、そもそも行き先はお盆で休務であることを伝えてやっと納得。今週末までのご滞在なのでまだまだアテンドが続く。連日の暑さもあってすでにぐったり。ああ、どこかのタイミングで休みとって、アイスとスイカ食べながらジブリアニメとか見てのんびりしたいわ。

 

気を取り直して、まだまだ続く出張中の読書記録を綴っていこう。あと数冊残っているので、思っていた以上に本を読んでいたようだ。とにかく陽が長いので悠長に時間を過ごしていると、後数分で真夜中なんてことが良くあった。まだまだ外が明るいので、作業に疲れ散歩で気分転換をと外に出た。気分的には18時くらいなのだが、公園の時計が22時半を指しているのを見た時は本当に驚いた。この夏時間はいつもより体が時差に適応するのに時間がかかった原因の様にも感じている。寝ようと思っても明るくてなかなか寝付けない。季節に関わらず暗い夜の来る日本に住み、それが習慣になっている私たちには明るい夜の対処法がわからない。同行された方も「眠れないー」と最初の1週間は苦労しておられたようだ。

 

さて、本「殺人事件」シリーズはこれが最後となる。21冊楽しく読ませて頂いた。時代小説も小説の中では連載が長く続くものが多い様な印象がある。マンガの世界は100冊近い連載が数多く存在するが、文芸の世界では時代小説がもの長めの作品となるだろう。

 

21作目の舞台は白金。最後の1冊も南町奉行根岸肥前守の推理が冴える。本書は最終章ということもあり、いろいろなことがきれいに落ち着くべきところに落ち着いた感じ。

 

不可解な事件は行方不明から始まった。町人の娘が次々と姿を消した。それもある程度の規模を持つ商家の娘たちで、姿が見えなくなってから数日を経て奉行所の耳に届くという、スタートから奉行所側に不利な調査となっていた。幼子がいなくなるのであれば誘拐なども考えられたが、皆年ごろの娘たちである。かどかわされたわけではないだろう。とすれば、娘たちはどこへ消えていったのだろう。

 

今となっては追うにも情報が少なすぎる。そこで根岸の想像力がどんどんと確信に迫っていく。手前にある山が霧で全く姿が見えないような状況であるのに、根岸には木の一本一本が見えているかのように小さなヒントから全貌を掴みだす。

 

さて、シリーズ最後になってわかったのだが、このシリーズは全ての作品が電子書籍化されているわけではないようだ。恐らく3冊ほどが残されているようだが、本作品でいったんキレイに幕引きとなった。

 

居なくなった娘たちが姿を消した理由には、実はものすごく大きな闇を根岸の見えない所で解決しようという「善」の心が動いていたことにある。これが南町奉行所に久々に平和をもたらすこととなった。そして根岸の傍で活躍していた同心の栗田と根岸家家臣の坂巻はいったん奉行所の中心となる調査から退くことに。双子の娘が生まれたばかりの栗田が家族と時間を過ごせるように、坂巻も己の幸せを追求する時間を取るようにとの根岸の心遣いが最後の最後にほんのり沁みる。

 

栗田と坂巻の粗野vs美麗のコンビの代わりとなるのが椀田と宮尾である。キャラクター自体も似通っているので、これから何が起こるのか楽しみ。