Dahlia's book log だりあの本棚

読書で得た喜びをここに記録として残します。 こんな本を読みましたという備忘録として。

#779 せっかく無水鍋持ってるんだからスープ作らねば~「まずはこれ食べて」

『まずはこれ食べて』原田ひ香 著

食べ物が埋める隙間。

 

この夏、続々と海外からお客様がやって来る。そして彼らはどういうわけだか帰ろうとしない。そもそも旅行日程も10日以上と長めであるのに、東京が相当気に入っているらしく23区から出たがらないし、加えて今回は滞在を延長するなどの荒業を使って来る人まで出て来た。毎日美味しいものをご馳走して頂けるのはありがたいのだが、朝、ブランチ、昼、ティータイム、夕食となんだかんだと5食も食べることになる場合もあり、ちょっとお腹が疲れてきている感じです…。

 

さて、そんな満腹中枢が完全にいかれつつある今、敢えて食に関する小説を読んでみた。というか、豪勢な料理ももちろん美味しいのだが、お茶漬けとかTKGとかおうちの庶民派ごはんがそろそろ恋しく、胃も「そろそろいつものご飯にして少し休ませてくれよー」な気分なのだろう。表紙の絵がおいしそうで、これこそ癒し!と早速読む。

 

本書は食についてがメインの小説かと勝手に妄想していたのだが、読んでみると人と人を食べ物でつなぐお話で、食べ物はどちらかというとツール的な意味で登場する。

 

舞台は目黒にあるベンチャー企業だ。大学時代の友人同士で立ち上げた企業で、創立当時は男子4人、女子1人の若さあふれる企業だった。今、みんなが30代手前となり、会社の状況も創立時に比べ小さな変化が重なりあって、目立たない不協和音がどこかに流れている。その会社の名は「ぐらんま」と言う。

 

そんなある日、代表取締役の田中が「お手伝いさんを雇おう」と言い出した。ぐらんまは住居として使う様な物件をオフィスとして使っており、IT担当の桃田は奥の部屋で寝泊まりしている状況だ。キッチンもお風呂もあり、まあ暮らすこともできる。しかしオフィスとなるとなかなか掃除が行き届かないし、気が付いた人が作業する=いつも同じ人が作業することになる。そしてそれがいつの間にか当たり前になるような変な習慣もできてしまったりするので、みんな手を出したがらない。

 

紅一点の胡雪は、ある日営業から帰って来て玄関が片付いていることに気が付いた。なんだかキレイになっている。そして田中の雇ったお手伝いさんが来て作業してくれたことに気が付く。お手伝いさんの筧さんは50代。効率的に家事をこなすが、胡雪はなんとなく当たってしまったりしていた。

 

ぐらんまの誰もが、心の余裕の無さ、不安、倦怠、不満を筧さんに吸い取ってもらうかのように、彼女と話すことで小さな変化が起きてくる。そして筧さんの作るお料理は美味しくて、それを食べる度に筧さんとの距離は縮まった。

 

そんな筧さん、実はかなりハードボイルドな態度で決してぐらんまのメンバーを甘やかしたりはしない。それが逆に居心地の良さになっているのだろう。ぐらんまのメンバーの心にある共通のしこりがある日突然目の前にさらされても、筧さんの料理は彼らを救うことが出来るのか。

 

作ったメニューの中でおいしそうだったものがいくつかある。具体的な作り方などは出てこないが、ホウレンソウだけでつくったスープというのがあった。無水鍋でならばそれは可能だろうな、とあれこれ検索してミキサーやブレンダーがあれば簡単に作れると知った。そう、スープというのは体と心に染み入るとっておきの料理である。

 

去年の冬は酸辣湯にハマってしまい、ほぼ毎晩酸辣湯を作っては食べ、作っては食べしていても全く飽きることなく好みのレシピ探しに没頭していた。そう、あの頃もスープでストレス解消していたなあ。今はまだまだ暑いので冷製スープの時期だろう。この頃、またストウブの鍋ブームがやって来ており、ついに14㎝と16㎝の小サイズまで購入してしまった。ちなみに、ラウンドココットは現在黒で取り揃えております。オーバルは是非赤が欲しいなあ。

 

ストーリーは社会人としての心の成長が主軸にある。自分の弱さと自分の強さを計れるものは更に一回り成長していく。そして成長には食事が欠かせないのである。