#778 色から伝わる温かさが染みるのです~「うみべのストーブ」
『うみべのストーブ』大白小蟹 著
染みる。
現在アマゾン関連のサブスクをいくつか使っているのだが、使わないものを整理しようと考えた。ひとまず今少し休みたいと考えているAudibleは解約し、配信関連のものもいくつか解約。そしてKindle Unlimitedだけは年末までそのまま使おうと決める。
現在借りたままになっている書籍も少し整理し、新たに気になっていた作品を読むことにした。本書もそのうちの一つで、読みたかった作品が無料(というか月会費980円)で読めるなんて素晴らしすぎる!。最低でも月1冊読めばもとが取れる計算なので財布に余裕がある限りは続けたい。いや、続けよう!980円、近所のスーパーなら8個入りのゴールデンキウイ1つの値段だし、カフェでコーヒーにデザートするよりもお得なのであれば、食後のお楽しみを1度減らせば良いだけのことだ。アマプラ会費が値上がりとのことだが、Kindle Unlimitedはこのままであります様に。
さて、この本を知った理由は思い出せないのだが、ちょっと寒そうな表紙に惹かれたことだけははっきり覚えている。本書は短編集で、7つのストーリーが収録されている。すべてが季節感のある作品で、そのうち半分が冬を思わせる内容だ。表紙になっているのは1作目のタイトルでもあり、本書のタイトルになっている「うみべのストーブ」で、よくよくみると男性の側に白いストーブが佇んでいるのが印象的だ。
この作品、色の使い方がとても素晴らしい。表紙はブルーを基調に寒さ、寂しさ、海などを表現しているが、中表紙のイラストはこうなっている。
今度は赤がものすごく温かみを伝えてくる。ほんのりあたたかい、ろうそくのような小さな小さな温もり。読んでいくと、こちらの心も温まりそう。ああ、そうだよ。がんばれるよね。と思えてくる。
7つのストーリーはすべて独創性に満ちていて、ちょっと笑えるところもありながら、ほろりとする内容もある。大人の読者には納得できるような心理的背景が多く、どちらかというと「癒し」に近い内容だろう。
今この猛暑の中、冬の季節の孤独感を思い出すのは難しいのだが、もし雨や雪が降り続く中、自分がたった一人だと感じた時にはこの本のことを思い出すだろうな、としっかり記憶に刻まれた。優しさを全面的にアピールしてます!な内容ではなく、この表紙の絵のストーブのようにただ側にいてくれる何かに気付かさせてくれる一冊。